長倉沢の記憶。(2022.7)

7月も最終日、明日からは夏本番となる8月だ。しかし今年の夏はなんかおかしい。梅雨が来たと思ったらすぐに行ってしまった。また戻ってくると思いきや全然戻ってこないまま暑い日が続いた。そして、そのまま夏になってしまった。こんな暑い日が続くのに、最近、体を動かす仕事が多く、毎日くたびれて家に帰る日々が続いていた。おまけにここ数年は世界的な騒動が続いている。コロナ、世界的な金融緩和、サプライチェーンの崩壊、それに由来するインフレ、そしてロシアの蛮行から資源高、さらにインフレが火を吹いた。大相場が続く。目が離せない。そして山へ行く日が少なくなっていった。

 

 

山菜シーズンが終わってからは、ときおり高山に赴き、軽登山ぐらいは続けていた。しかし、あまりにも出不精になっていた。なんたって朝が起きれない。夜更かしが過ぎるからだ。週末を迎える金曜の夜、しびれを切らした相棒のBさんからラインが入る。35度が予想される二日後の日曜、升沢コースで船形山山頂まで行こうと言うではないか。ちょっ!そんなことしたら僕ちん死んでまう!それは無理!ということで大倉沢、長倉沢なら行きたいとこちらから提案する。いつもの凸凹3人コンビだ。もう一人のCさんは大倉沢の黒滝も長倉沢の滝も見たことがないので一度連れて行きたかったのだ。

 

長倉沢の滝を登ったのは一昨年だ。もう二度とあの滝は登れないと今では思っている。滝に寄りかかるようにあるあの倒木さえ残っていればだが、無ければ私には無理だろう。私でなくともあの倒木がないと中間支点が取れないので沢登りとしてはあんま登るべき滝ではないであろう。その上も支点が取りづらい。それ故に山岳会あたりでは登っていたとしても記録としては残していないかもしれない。そんな滝だ。ちなみに、大倉沢の黒滝と位置的にも対になっているので、個人的に白滝と呼んでいる。どどどーって白いし。いつも安易だ。

 

 

一昨年登ったのは右のルート。沢の達人の某氏が登ったのは多分左のこんな感じのルート。

 

 

とはいえ、この滝を登った人を一人知っている。山道具や山遊びについてお世話になっている某氏だ。左側から斜上し、水線を超えたらしい。渇水期じゃないと無理だよとも言っていた。われわれは右側を直登したので別の登攀ラインである。ずっと気になっていた。倒木が残っているかも気になっていた。へっぴりな僕ちんを助けてくれたあの倒木、もうないだろうな、そんなことを思いながら、氾濫原へと向かった。

 

 

 

久しぶりに足を入れた沢は気持ちよかった。猛暑予想の日だったが涼しい。気持ちのよい風が沢すじを駆け抜けていく。暑さは微塵も感じない。沢はいい。もともと登攀とかは好きでないわたしはのんびり沢を歩くのが好きなのだ。休み休みゆっくりと遡上する。休むたびに大きな石の上に寝っ転がる。寝転んで目を開ければ、たくさくの木々と葉っぱが覆いかぶさってくる。その隙間から降り注ぐ夏の日差し、垣間見える青い夏空。それらを一緒くたにぼけーっと眺める。夏らしい いい日だった。

 

 

夏だなあ。

 

 

 

お昼前に大倉沢の黒滝にまず向かった。こちらは上段、下段からなる 細いけれど高い滝だ。下段は登れるし、巻くのも容易だ。しかし、上段は登るのは不可能だ。眺めて楽しむ滝だろう。

 

黒滝下段。右の上の方にちっこく上段の滝がみえる。

 

黒滝上段。周囲の岩も逆相で最上部はハングもしているしこれは絶対無理だろう。

 

黒滝付近でしばらく遊び、長倉沢へ分岐する二股まで戻った[地理院地図]。右股の長倉沢へと入る。20分程度遡上すればお楽しみの白滝だ。思い出深い滝だから二年ぶりの再会に心が躍る。果たしてあの倒木はあるのだろうか。高巻きになるけど秋になったら同じルートで長倉尾根まで詰めてから氾濫原へ戻ってもいいな。キノコも取りながら。そんなことを思いながら滝へと向かった。

 

 

遠目に長倉沢のあの滝が見えてくる。一昨年前とはいえ、懐かしい思い出みたいになったものが蘇ってくる。全体が見える位置まできた。ただいま。なんとあの倒木も残っていた。ということは 登ろうと思えば今でも登れないこともないのか。いや、もう登らないけどね。Bさんが滝に着くやいなや 斜上ルートを試しだした。今日は登るための装備は持っていないのでお試しだ。ホールドもスタンスもしっかりあるようで確かに斜上は可能なようだ。しかしこの水量では水線超えは難しそうだった。渇水となったのこの滝は見たことがないからどうなのかよくわからない。降りれなくなるからこれ以上登らないけど行けそうだと Bさんは言っている。

 

 

斜上を試みるBさん。滝を見るとすぐ取り付こうとする。さすがである。

 

ほどなくすると、今度はCさんがへつりを始めた。われわれが一昨年へつってから滝に取り付いた左岸のへつりだ。パッと見は絶対ムリって見えるんだけど、微妙なホールドやスタンスがある。岩も滑らない。なんとかいけるはず!と言って無責任送り出したのだが、Cさん、見事に倒木まで辿り着いた。たいしたもんである。

 

へつりを試みるCさん。見事に倒木まで辿り着いた。ロープがあれば上までいけるかもしれない。

 

 

 

 

わたし?当然見ていただけさ!出来得る限り危うきには近づかない。怖いんじゃない。断じて無い。暑い日だったが滝のそばは寒いくらいだった。少しだけ滝から離れてお昼を取った。Bさんからもらった家庭菜園の浅漬きゅうりが美味しい。滝から吹き下ろす風は冷たく。合羽を羽織るほどだった。お昼を取りピストンで沢を下る。わいわい、ばちゃばちゃ、ざぶんざぶん。楽しい沢歩きをしながら氾濫原に戻る。着替えも済ませ、下界に入るや 信じられない暑さでたまげる。コンビニでアイスをむしゃむしゃしていると孫を連れて泉ヶ岳のヒザ川で遊んできたお知り合いの夫婦に偶然出会う。なんかこの方と偶然出会うことが多いよな。蔵王の小阿寺沢の滝を登ってるときにも出会ったし。しかし遭遇率高すぎじゃね? きっと週末とあらば 方々へとほっつき遊び歩いているに違いない。そうだ、そうに違いない。

 

山は偶然の出会い、奇遇な出来事がよく起こる。非日常の遊びだからなんだろうか。部屋に引きこもってばかりいるとまたデブってしまうから少し山に行かないといかんな。途中になっている前森の記憶もいい加減書かないとな。そんなことを思いながら家に帰った。

 

 


 

追伸:ぷーぷでた!ちゃんと取れた!

 

 

 

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