比較的簡単にできる、重大事故防止対策

山歴は長いわけでもなくむしろ短いですが、自分で経験してきたこと、見たこと、したこと、試したこと、結果から考えたこと、調べたこと、人から聞いたこと、教えてもらったこと、などなどを踏まえたもの。大した労力なくやれる程度の比較的簡単なもの。されど効果は高い。低体温症、熱中症、道迷い。案外身近にある危険とその対策。

 

 

低体温症対策

春先、初冬に降る冷たい雨、みぞれ。さらに風が加わったときに強風下の尾根や稜線にいると、あっという間に低体温症により歩行不能となるリスクが生じる。春先、初冬の冷たい雨は恐ろしいと思うぐらいが丁度いい。同じ日に別方向から同じ山に向かっていた方に事故がありましたが、引き返す判断をしていなかったならば自分もどうなっていたか分からない。遭難事故報告書とかをみても、なぜそこまで来ていて・・・なんてのがほんと多い。条件によっては、低体温症が進んで、体が動かなくなるまでの時間的な猶予はさほどないのだと思われる。

 

・雨合羽は使ったら洗う、撥水スプレーをかける、アイロンを当てる

要の機能の1つである雨合羽の透湿性は、合羽表面の撥水性がだめになり、表面が染みるように雨水に覆われるようになるとばほぼゼロに。汚れていても落ちる。その結果として、合羽の内側には結露が大発生してずぶ濡れ。汗か浸水か?と思ったりもするが大概は結露。たかが結露と思いきや、延々と発生するので、次第に体が濡れていく。体温がもっていかれる。一方、外側は、雨水の膜で覆われているようなもので、そこに強風があたり、水分が飛ばされる。一緒になって、盛大に熱が飛んでいく。故に撥水性極めて大事。

洗ってから、撥水スプレーをかけておく。撥水性が戻りづらくなってきたらアイロンを当てる。アイロンの当て方はネットで調べるとすぐ出てくる。お店でも聞けばしっかり教えてくれる。雨合羽の基本メンテの1つ。

 

・撥水性が戻らないのであれば買い換える

登山で使用する雨合羽は防水性さえあればよいのではい。透湿性も撥水性も必要となる。しかし、使用すればするほど劣化する。藪でも利用するような人は特に劣化が早い。3万も4万もする高いゴアテックスでなくともワークマンやモンベルの透湿性素材でも十分。高級ゴアテックス一着を大事に何年も使うより、コスパのいい素材のものを短い間隔で買い変えていったほうがよいケースも多い。お古は、軽登山や森や藪や山菜採りにでも活躍してらもおう。山のやり方に応じて選ぼう。

 

・合羽の内側の湿気を抜く

定期的に少しジッパーを開けるなどして合羽の内側の熱と湿気を出す。熱はもったいないけれど、合羽の内外の温度差も結露を促進するため。結露でずぶ濡れになるとほんとひどい。靴内部も浸水かと思えるほど濡れるときもあるけど結露の場合も多い。

※冬季はこういう結露発生の条件になりづらい。気温、空気の乾燥により、雨合羽内の結露はまず起きない。着込みすぎない、汗をかかないスピードが大事。

 

・メッシュ構造のアンダーを着用

すばらしい機能性の下着。活用しよう。長く使える。汗が吹き出す暑い日も快適。

 

・行動食をこまめに取る

あまり重視されていない。あまり知られていない。食べる→消化→体内に熱発生、は極めて大事な要素。風雨にさらされて、熱が奪われ、体温が下がる。危険な状況になればなるほど行動食を取りづらく(取らなく)なる。余分に食べてでも体内に熱を発生させるべきなのだが、逆に食べなくなることにより体温を維持できなくなる悪循環。低体温症になっているのに気づかず、もうあそこまで行けば小屋だから、あそこまで行けば助かるから。そして何も食べなくなる。結果、ここまできてるのに、なんて場所でパタリと動けなくなる。低体温症のリスクが考えられる日ならば、飴などのすぐ口に入れられるものは簡単に取り出せるところに用意。低体温症の可能性が少しでも危惧されるときは、常に何か口にあるぐらいで丁度いい。リーダーはメンバーにカロリー摂取させることを意識。青ざめてきた人がいたらとにかく甘く喉越しのいいものを口に入れさせよう。お湯を与えよう。

 

・GPVを見る

GPVをみれば、稜線や尾根での、風速や気温、雨雲の状況などを事前に見ることができるので活用したい。GPVは最初とっつきにくいですが、誰しも山での天候を多く経験しているし、風の強さ、向き、気温、雨雲の様子などをみるようにしていけば、どういう日になりそうなのかだんだんと想像できるようになってくる。山に行く日はもちろん、平日も天気予報と解説に合わせて、朝にGPVを見る。風、雲、気温をGPVで見て、天気予報、天気解説、実際の天気と絡ませていく。続けていると積み重ねが増えていく。尾根で冷たい風雨(みぞれ)にさらされそうか(低体温症リスク)。しとしと雨になりそうか。山のどっち面に雲がでそうか(眺望)。大気が不安定か(雷)。高い雲になりそうか。色々わかってくる。時間レベルでもなかなかの精度。ピーカンの日は平地天気予報やテンクラでもすぐ分かるけど、そうじゃないときはGPVのほうが情報量が多い。

 

・そんな日には行かない、引き返す

念入りに装備を準備するか、パーティ行動のしっかりした山行パーティで臨むか、何かあれば簡単に引き返せる場所、そうでないならばそういう日に山行をしない。早めにすぐ引き返す判断しちゃったほうがいい。

 

 

 

熱中症対策

昔は、夏バテ、夏に弱い、日射病など幾分軽く見られていたようだけれどそうでもない。熱中症による山での事故も少なくない。ただし、低体温症とは違い、人によるところも多い。とはいえ、れっきとした体の異常状態なので軽く見ないようにしよう。

 

・体調管理、しっかりと睡眠を取る
・気温の低い時間帯に山行する

それなりの標高差、距離があり、気温上昇が見込まれる日は、なるべく早い時間に山行を開始し、暑くなる頃には降りだすぐらいが丁度いい。前泊してしっかり睡眠を取って未明出発なんかもよい。

・そんな日には行かない、引き返す

沢登りとまでいかなくても沢遊びでも十分涼める。森の中は酷暑でも比較的涼しい。沢はもっと涼しい。暑い日に稜線歩きたいなら車で高所までいける山。

 

 

 

道迷い対策

・GPSは1つは持つ

大ベテランでも、不幸な条件が重なると道迷いの事故は発生している。残雪期、ガスによる視界不良、小さなトラブルの続発。等々、運悪く重なるとどうなるかわからない。せっかくの現代の最強のツールといってもいいものなのでどんなときでも1つは持とう(使えるようにする、見れるようにする)

 

・GPSは複数もつ

紙地図での読図、紙地図コンパスによる歩行にどれだけ慣れてるかにもよるけれど、GPSへの依存度が高いのであればあるほど、それが無くなったときのことを想定したい。人の多い山の一般登山道であれば大丈夫だけれど、残雪期山行、ソロ山行、藪山行、山菜採りなどはそうでもない。山中でGPSがなくなったときでも、自分は、自分たちは帰れるような山行かどうかよく考えてみる。GPSが無ければ自分は、自分たちはまずい。そう思われる山行のときは、中古のスマホを活用(通信できないものでもよい)するなどして複数所持(ソロでなければ必然複数になる)。お金もかけず、数百グラムの追加だけで安全マージンはかなり広がる。

 

・登山道ではない森歩き、藪歩きもしてみる

自分は登山道しか歩かない。とはいっても道を外れる(外れざる得ない)状況になったとき、そうも言ってられれない。そんなとき安全な場所に戻れるか、ルートを選べるか、行けるか。GPSがあっても、地形を見ても、経験がなければ容易ではない。登山道を離れて、森歩き、藪歩きもやってみる。訓練ではなく山遊びの一環としてはじめてみる。地形を見て歩く、自分でルートを決めて歩く。といったことを経験しておく。

 

・GPSを見ないで歩いてみる

危険の少ない、藪、雪の中で、GPS無しで、地形図とコンパスで自分は決めた目的地に行けるかやってみる。それをやると自分の読図歩行の限界が、そして、いかにGPSに頼った山歩きをしているかが身に沁みます。練習するといっても、危ないのでGPS見れるようには必ずした上で練習しよう。雪山、風雪、ソロ、スマホを落とした、バッテリーが切れた。どういう状況に陥るか想像ができるようになります。想像が出来たら、どうすればいいか、対策を取りましょう。

 

・ココヘリを持つ

年会費大したこと無い。これがあるだけで会員であれば、サービスの範囲でヘリで探してもらえる(救助は別)。コストパフォーマンスはとてもよい。自分が助かるためというより家族のために。山に入る人は、心のどこかで不幸な事態が起こりうることも受け入れて山に入っていると思うけれど、家族はそんなこと受け入れていない。せめてもの誠意。

 

 

危急時対策グッズ

山行に合わせ、必要に応じて

 

細引き

ナイフ

エマージェンシーシート シュラフカバー

針金、ミニペンチ

非常食

非常燃料(エスビット&ミニゴトク)&容器(シェラカップ)

ライター(必ず防水、たまにつけてみる)

浄水器(いざとなったら泥水でも飲まなくてはならない)

下痢止め(下痢はほんとやばい、速度半分に)、痛み止め(捻挫時も使える)

三角巾、包帯、テーピングテープ(怪我以外も用途多い)

サムスプリント、ポイズンリムーバー

10mテープ紐(シットハーネスにもなる)

軍手(非常用に1つもっとくと案外使う)

ペツル e+lite(わずか25gの補助ヘッデン。ソロ、リーダーに。)

 

遭難したあとの対策

経験、道具、行動、どんなに安全を心がけても事故は0%にはできません。予測不能なものとしては、熊、急病、低体温症を筆頭に、さまざまな要因が重なっての道迷い、滑落による行動不能が挙げられる。なにをしたって遭難はゼロには出来ません。自分だって、いつ遭難するか分からない想定を持っていることが大事。たとえ自分が山でどうになかなったとしても、せめて家族にかける負担を減らすためにもココヘリを持ちましょう。

 

ココヘリを持とう

スマホ電波が届かないところでも高周波発振で遠くからもヘリで追跡して、現場を特定できるサービスを展開しているココヘリ(https://www.cocoheli.com/)。最大16kmあたりから電波を受信できるそうで、訪れた山域さえ分かっていればほぼほぼ位置の特定可能です。年間4,015円。

山に入る人は表向きは自分にだって何かは起こるかもしれないと認識しつつも、本音では自分は大丈夫と思いがち。私もそうだと思います。だからこそココヘリは恩恵がある。なんたって見つけてもらえる。入っている方も多い山岳保険は、救助してもらったときのお金の為の保険ですが、ココヘリは自分の命のため、残された家族のためになるサービスです。できれば両方、片方だけというならむしろココヘリに、と私は思うぐらいです。

特に、一般登山では無い、沢登り、藪山登山、山菜採り、森歩き、沢歩き、渓流釣り、雪山登山をやられる方はココヘリを持つとメリットが大きい。雪山は、一般登山の延長でやり始める方も多いのですが、どんな山、どんなルートであろうと、雪山は一般登山ではありません。キノコ採りなんかも計画なんて作れないのがキノコ採りなのでだからこそ役に立つ。ココヘリを持っていれば自分も少し安心が増える、家族も少し安心が増える。少しでも安心を増やして山を楽しみたいものです。

 

こんな山遊びをしてる人は特に

沢登り、藪山、山スキー、バリエーション等をやる人は別(当然)として、普段は一般道の山登りが中心でも、こんな人はココヘリを持つと家族も安心です。正直なところ、ココヘリは自分のためというより、家族のためになりますので。

  • 雪山に入る
  • 単独で入山する、することもある
  • 前日、あるいは当日に行き先を決める
  • 登山計画書を出さないこともある、出しても現地で予定を変更しがち。出さない。
  • 山菜採り、キノコ採り、渓流釣りをする

要するに山中でなにかあったとき、他人が自分を探しづらいような山をしてる人は持っていると恩恵が大きい。自分は危険な山はやっていない、安全な山行をしてる、遭難しない、とかは関係なく、何かあった時、他人が自分を容易には探せないような場所にいるかどうか、その頻度、を基準にするといいのでないかと。

 

ココヘリ親機

加入して携行するのはココヘリの子機ですが、親機というのもあって、親機を使っての子機探しが可能です。用途としては、登山以外にも、認知症の家族、幼児に子機を持たして、何かあったら親機で探すといった、雪山のビーコンのような使い方。ヒトココ(認知症の家族、幼児に対して)として使用する場合は、親機をセットで購入して使うようです。遊園地で迷子になった子供をヘリで探すわけにもいかないので(笑)

山での遭難者捜索においては、親機があり、かつ、遭難者のココヘリIDが分かれば、親機を使いながらの徒歩での現地捜索も可能です。見通しが良ければ、範囲(広)モードで1kmぐらいから受信でき、電波が強くなってきたら範囲(近)モードにして絞って探すといった使い方。方向と距離が出るのでわかりやすい。所属してる山の会でも親機を1つ保有しています。山岳会でも最近はココヘリは持っていて当たり前になりつつあるようです。どこにも所属していない場合でも、もう数年も経てば持ってて当たり前のようにもなるのではないかなと思います。そこまではいかんかな。まぁでも一般道の山登りでも恩恵は大きい。

自分は遭難しないというよほどの根拠でも無い限り、持たない理由は特に無いんじゃないかと思います。山のお高いギアに比べれば年間数千円はそこまで高くないですし。

ヒトココ解説ページ(公式サイト)