ナメコの記憶(2021.11)

毎年11月の上旬になると、船形山山麓のいつもの沢を毎年訪れる。そこで採れたナメコで蕎麦を作って食し、船形の秋をシメるのだ。9月の末、鈴沼近辺から私のキノコシーズンは始まり、この沢で蕎麦をして終わる。その後は、里山で多少なり採ることはあれど、わたしにとっての山の秋はこの時点で終わりだ。白くなったり黒くなったりする遠くにある山々を眺めながら、雪が安定するまで冬をのんびり待つことにしている。

 

この沢で秋に蕎麦をするのも今年でもう5年目になる。恒例行事といってもいいだろう。仲間二人に声をかけて三人で今年もまた訪れた。

 

 

晩秋の船形山麓の沢。冬の前の穏やかなこの季節は大好きだ。

 

 

ところで、この近くを根城にしている熊がいるようだ。去年、2歳ぐらいのまだ母熊が近くにいそうな兄弟のメンコイ熊ちゃん二匹がいた。去年のちょうど今頃だった。僅か前方10数m先という距離で出くわしたのだが、こちらに気づくと二匹揃ってタカタカと小さな尾根を駆け上がっていった。斜面の上に上がりきると、一匹がこちらをシゲシゲと見てからどこかへ去っていった。その様子を見れなかった熊好きの山仲間の一人が、いいなぁ いいなぁ、と残念そうな顔をして何度もぼやいていた。

 

こっちをチラチラ見るめんこいクマちゃん。(動画GIF)

 

今年もと期待はしていたのだが行きは出会えなかった。ところが、蕎麦を食したその帰り、今年も出会えたのである。その兄弟の片方だろうか。少し大きくなっている。もう親離れしていそうだ。その熊かどうかは分からないが、去年からちょうど1年経ったぐらいの体つき。斜面を転がり落ちるかのように駆け下りてきたのだ。やぁやぁ去年ぶり元気~? てな感じで。な訳はないが。

 

こちらに気づいていないようだ。熊!わたしが叫んだその時、急斜面の中腹あたりで向こうもこちらに気づいた。お互いの目があう。うっわ!とでも言ってるかのような、ビクッと驚いているかのような、キョトンとしているかのような、2つが織り混ざったような表情だ。メンコイ。刹那、踵を返すと、タッタカタッタカと急斜面を駆け上がっていく。今回もまたあっという間にどこかへ行ってしまった。

 

 

今年は一緒に見ることができた熊好きの彼。戻ってこーい、おーいくまちゃーん と声で追いかける。戻ってくるわけない。仲間を連れて戻ってきたりしても困る。親離れした熊は単独行動なのでそんなことはありえないが。しかし、ジャングル大帝レオのごとく、仲間10匹ぐらいを引き連れて戻り、戻ってきたど-!と崖の上から颯爽と見下ろしてくる光景を想像してしまった。

 

諦めきれない彼は、「俺、ナメコあるか見てくっから!」と言って、熊の消えていった右岸の崖の上に幾度となく向かう。彼が戻ってくると尋ねる。「熊いた?」そう聞くと、寂しそうなしかめ顔で「いなかった・・・いや違う!ナメコなかったよ!」 分かりやすすぎてもう……。

 

ナメコ蕎麦。沢のそばで作って食べるのは とにかく美味い。

 

 

 

去年からは、ナメコ蕎麦の食後に頬が落ちるほどの甘いお楽しみが一品増えるようになった。木登りが得意な仲間のおかげで、秋に収穫が増えるようになった山葡萄を使ったチーズケーキだ。船形山の採れたてナメコ、その沢のそばで蕎麦を作って食す。食後には、船形山葡萄のチーズケーキ、そして、山葡萄のジュース。こんな幸せなことはない(アムロ風)。今から来年の秋が楽しみである。

 

 

山葡萄をソースにしたチーズケーキ。もちろん私には作れない。ありがたやありがたや。

 

 

 

 


 

 

(*)メールちょろちょろ頂くのですが

・前森の記憶はそのうちに。個人的にやたら苦労した山行だったせいもあってか何かうまく書けない(笑)多分そのうちに。。

・夜叉ヶ池は、蛇ヶ岳ピークからは多分見えません。蛇ヶ岳を降りて、草原への分岐からさらに三峰側に向かうとまたちっちゃなピークがあるのですが、そこに登って少しだけ降りてから北丸松源頭方面、沢の右岸、そこからだと沢の向こう側、台地になった森の中に見えます。