山の不思議、山のオカルト、山のサイエンス

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ふと見つけたときに追記更新。

 

ガス缶カバーの効果 (2021/7/19)

ガス缶のカバー

冬の山記録とかを見ると写真でチラチラ目にするガス缶のカバー。見た目かっこいい。冬季は外気温が下がり、ガスバーナーの火力も落ちる。お湯を沸かすのに時間がかかるようになるのは誰しも経験する。そのためにこのカバーがあるのかもしれない。ガス缶を暖めて バーナーの火力アップ。

熱の移動からみれば効果無い

しかしこれ、熱の移動 で考えればまったくもって効果は無い。むしろ逆効果である。キリキリ冷えた缶ビールをタオルで包み込めば温まるだろうか?と考えれば分かりやすい。包み込んでやればビールは温まるのではなく、逆であり、冷たさを維持できる。冷えた缶ビールよりも温かい外気に触れなくすることで、包み込んだタオル内部で冷気を維持できるからだ。感覚的にも分かるだろう。外気温より冷たいものを布などで包み込めば冷たさを維持しやすくなる。一方、外気温より温かいものを包んでやればどうなるか。冷たい外気に触れさせないことで温かさを保てる。人が服を着て温まる理由はこの後者だ。また、人は体内から熱を発するので、基本的には服で包み込んでやれば熱がたまっていく。

燃焼中のガス缶とガス缶カバー

ガス缶に戻る。ガスバーナーの燃焼では、高圧のガス缶内部に液化状態の燃料が入っている。缶は沸点より高い外気に温められているので、ガス缶内部に気化したガスも上部に溜まっている。そのガスが使われてバーナーは燃える。ガス管内部で常に気化を伴いながら、ガス缶のガスの部分がバーナー燃焼部にガスとして送られるわけだ。気化だから吸熱が起こる。燃焼している時、気化も起こり続けるので、ガスバーナーを使っているとガス缶はどんどん冷たくなっていく。触れば ちべた!ってなるのは知っている人も多いだろう。知らない人は家庭用ガスコンロで鍋をしたときに しばらくしたらガス缶を触ってみよう。冷たいはずだ。冷たくなってきて、沸点(燃料により−10℃〜数℃)並みにガス缶内部の温度が下がってくるとガス缶内部の液化している燃料の気化がうまく起こらなくなる。ガス圧が下がる。バーナーに送られるガス流量が減る。火が弱くなる。

※)家庭用ガス缶(CB缶)の取付部には爪がある。横置きしても必ず同じ部分が上に来るようになっている。横置きしてもその上部にあたるところにL字に折れ曲がった吸入ノズルがある内部構造となっている。内部のそのノズルの先には気化したガスがある。それを外に出している。なのでイワタニのジュニアガスバーナーを使うときは、しっかりと回るとこまで回してガス缶とバーナーを接続しないと液出し状態になるので注意だ。

気化に伴い周りの熱を吸い込み、冷たくなっていくのがガス缶だ。さて、これをカバーで包むとどうなるか。燃焼が始まるとガス缶は周り(外気)より冷たくなる。つまり外気より冷たいし、熱を吸収する物体なのだ。人と逆だ。これをカバーで包めば外気より冷えた状態が維持されやすくなる。すると、ガスの気化が起こりにくくなり、バーナーに送られるガス圧が減り、ガス流量が減るので火力は落ちる。ガス缶カバーまったくもって効果なし。むしろ逆効果である。

寒い時期のガスバーナーはどうしたらよく燃えるのか
  • 一番手っ取り早いのは、火が弱くなってきたらガス缶を両手で包み込むことだ。手はちべたいが、手にある熱をガス缶にあげてやるのである。ガス缶を手でぎゅっとしてあげると、ガス缶は温まる。すると、即座に火力が上がる。冬にやってみるとすぐに分かる。複数人いる場合は 交代で ちべたい思いをしていこう。鍋が早くできあがる。ただし、ガス缶直結式のバーナーだとこれは少しやりづらい。鍋の下に手を入れるのは危ないからだ。鍋が倒れたら火傷する。セパレート式のバーナーだと簡単にできる。冬には便利なセパレート式。
  • 水筒にお湯を持っていたらちょっとでいいからガス缶の横側にでも ちょぼっとかけてあげるといい。あっという間に火力が上がる。ただしガス缶はその後 錆びるので その日に使い切らないなら注意が必要だ。上に同じくセパレート式でないと鍋やフライパンの大きさによってはこれも難しい。
  • 泊予定の幕営地、小屋が近づいてきたら、ガス缶をザックから取り出して 腹に入れておく。小屋に入ってお湯を沸かすときにこのガス缶を使うとよく燃える。冬季幕営の時は幕営中に腹にいれておいて いざ使うときに腹から取り出して使う。よく燃える。すぐに缶は冷えてくるので効果は短時間だが時間短縮にはなる。
  • セパレート式のガスバーナーの場合は、バーナーの火の輻射熱を利用する。ガス缶を燃焼部に気持ち近づけて、燃焼部から出てくる火の輻射熱を少しだけもらう。近づけすぎるとかなり危険になるのでほんの気持ちだけ。
カバーって効果ないのか

じゃぁカバーはなんであるのか。本当に効果は無いのか。1つだけ効果的な使い方があるかもしれない。それは雪の上にガス缶を直接置く場合にガス缶と雪面の接触を防げる。ガス缶を冷えにくくできるかもしれない。たとえば残雪期春山。気温は10℃。そんなときは0℃の雪と接触しないほうがいいのは明らかなので効果はあるだろう。しかし、包んでしまうのでガス缶が外気温の10℃より冷たくなると、外気から熱をもらいにくくなるから保冷効果。やっぱあまりよくない。雪の上になにか敷くだけでいいんでないかと。また別のケース。外気温-10℃の厳冬期。こんなときはカバーつけて雪の上におこうがおくまいが意味はない。そもそも周りも寒い。雪面の氷もたいして変わらん。そしてガス缶も冷え切っているならカバーで包んでいる保冷効果の分、さらに不利になのるで やはりやめたほうがよい。ここまで寒いときは普通にやっても燃えないので、手で缶を暖めるか、素直にガソリンバーナーを使おう。

ということでこのカバー、基本的には効果ない。商品説明にもあるとおりガス缶を保護するためのものである。しかし1日で使い切るガス缶を保護する意味は正直よくわからない。他の恩恵は…もしかしたら “写真映え” このためのグッズなのじゃなかろうか。

 

 

 

 

 

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