GPVで天気を読む

山にも普段の生活にも便利なGPV。使いこなすと色々便利。尾根歩きで眺望が欲しい。危険な気象を回避したい。稜線での風、気温を知りたい。そんなことがよく分かる。使いこなすとよく分かる。

 

GPV
  • 雲量(雨量)、風、気温、気圧の気象数値予測を見ることができる無料サービス。
  • 雨雲レーダーのようにもみえるが、レーダーは観測データで、GPVは気象の数値予測なので別物。
  • 気象予測データの出所は、気象庁のスパコンで計算され、気象予報に使っている気象予報データのまんまです。

 

他にある山地の天気予報サービス
  • てんくらやtenki.jpでも山に特化した予報やアプリも出しているが あまり精度がよくないように思われる。検証したわけではないが、説明とかを見る限り、山地のピンポイントの数値予測をベースとしているのではなく、麓の平地予報の結果が出すぎているようにみえる。個人的にはあまりアテにしていない。見ることもない。
  • てんくらA、B、Cは、季節、高度ごとの基準によって風、気温、降雨降雪の有無を基に判定を出しているので、A=晴れ(眺望がある)ではない。安全度(山登りに適しているかどうか)のA,B,Cである。ガスガスの曇天でも風が弱く、気温が低くなければA判定が出る。尾根歩きだと眺望が欲しくなるので、A判定だと眺望も期待しがちだが、そういう判定ではないので注意。
  • 落雷確率。国際気象海洋株式会社が提供している。大気が不安定で落雷確率が上がっているのはどのあたりかがよく分かる。青~黄ぐらいまではそこまで心配する必要はないが、橙~ビンク・赤は要注意。まずほとんどのケースで雷の音は聞く。

 

GPVでみるもの
  • 「詳細」
    • 39時間後までで、3時間毎に更新される。
    • 計算メッシュが細かいので解像度が高く、予測精度も高い。
    • 39時間先の結果までしか出ないが、基本こっちを見る。
    • 主に雲量(雨量)と風をみる。気温は平地予報見といても問題ないが、温度分布は見たほうが良い。
  • 「広域」
    • 10日以上先まで見れる。1日2回更新される。
    • 計算メッシュは詳細より粗いので、数日先以降はそんなに精度は出ない。
    • こちらは大雑把に把握する程度。一般の週間天気予報も同じで、余程安定した天気が続かない限りは5日先の予報は基本的に誤差が大きくて当たらない。当たらないことがむしろ正しい。
    • 週末とかの、大晴れ、雨、雲りのいずれかを見る程度でよい。更新は1日2回だけれど、更新されるたびに数日先の予報は動きやすいし、目安程度に使う。たとえば月曜に、今週末どうかなぁ程度には見ておけばよい。雨か晴れか。予定決行するかどうするか。最終判断材料には使わない。
  • 雨量・雲量の紫色
    • 下の画面にも出てる紫。雨模様の時にこの色が広がるが、”紫”は時間で<1mm以下の降雨を表している。しっかり雨が降るという意味合いでの色ではない。霧雨、あるいは、降ってもぱらつく程度。降らないまま曇天となることもある。その色が紫なのでここだけ注意する。青色の場合は雨とおもってよい。

 

 

 

こんな風に使う
  • 週末の天気を見る。たとえば水曜あたりに “広域” で週末の様子をGPVで見る。平地の週間天気予報、天気図もみる。木曜夜あたりになると “詳細” で土曜午前の様子が分かるようになる。週末の予定を決めつつ、金曜夜に再び翌土曜の様子や、あるいは日曜の午前はどうかな、という感じで見るとおおよそ週末の天気を概ね把握できる。
  • 尾根歩きのハイキングのときは眺望があったほうが嬉しい訳で活用しよう。1時間単位の雲の出方も概ね把握できるので重宝する。
  • GPVで遊ぼう。山頂や稜線で眺望が得られるかどうかを、GPVの情報を踏まえて推測するのは 案外なかなか楽しい。狙った時間に山頂にいき、ピッタリカンカンでその時間帯だけ晴れたときは大いに喜ぼう。尾根歩きだと遠望もできるので 現地での気象(雲)の結果を自分の目で観測もできる。GPVが予測する雲模様と現地の結果を見比べる。気象官になったつもりで山を歩くのも楽しいものである。気象読みの遊びだ。遊びながらそのうち山の気象官になれるやも。
  • 計画をしっかり立てて実施するそれなりの山行の時は、晴れるかどうかはあまり問題にならないが、天候由来の危険度の大きさを把握するために使いたい。落石や沢で増水が予想される大雨、低体温症リスクが高まる冷たい風雨、暴風雪、等々。

 

数値予測モデルとかの細かい話
  • GPVは、気象庁のスパコンによる数値予測モデルの結果(雨、風、気温)を可視化して表示してくれているサービス(無料)
    • 数値予測モデルによる数値(データ)は気象庁から広く提供されている。座標、温度、気温、気圧、風速、雲量みたいな膨大なデータの羅列なので見ても分からない。この数字を可視化してくれてるのがGPVというサービス。
    • 最新の予測計算結果が割と早く提供しているようだ。気象庁自身が天候予測のベースとしている各種予測数値結果を同じようにしてみることがきる。
  • 一般に平地で出される天気予報は、数値気象モデル、従来の天気予測方法、および、地域ごとの情報を加味して気象官が予報を出している。
    • 気象庁、あるいは、民間の気象サービスも、気象官は主に人口の多い平地の気象予測を行う。
    • 山のような特殊なポイントは利用者も少ないのでいちいち予報を立てて出すことはない。仕方ない。
  • 近年では数値気象モデルの結果がベースであろうから、その意味では気象予測モデルの結果をGPVのようなもので見れるのは貴重である。
  • 山の天気は平地に出される予報よりこっちを見ていった方が当然ながらよい
    • てんくらやtenki.jpで個別の山ごとの天気を出しているが、数値予測モデルの結果をみて個別にだすようなことは手間であろうしおそらくやってない。平地予報を利用するなりして、決められたルールに従い機械的に出しているだけだと思われる。(これに関する情報は出てないので分からない)
    • たとえば、”鳥海山”であっても、天候をひとくくりに出来ない日もある。その日の気象状況によっては西面と東面で天候がまったく異なることがある。山という壁があるわけだから、東西方向の風が吹く時、湿気と温度によってはそうなるときもある。鳥海山の東面、百宅口、湯ノ台口では曇天や小雨なのに、西面の象潟口は晴れ、なんてことはよくある。こういうときは、GPVで雲の出方にも現れて分かることもある。
  • 同じところで提供しているSCW(一部有料)もある。スマホでもみやすい。個人的にはGPVの方が使いやすい。
    • SCWは、更に格子が細かい2km間隔の「局地モデル」による10時間先までの詳細な局地予測を見ることができる。
    • GPVは、「詳細」で5kmメッシュ39時間先までの予測、および、「広域」で20kmメッシュ11日(264時間)先までの予測。下図で「詳細」がメソモデル、「広域」が全球モデル。
    • SCWは、上記に加えて局地モードの表示が可能で、2kmメッシュ10時間先までの予測を見れる。下図の局地モデル。
    • ただし、SCW局地モードは、無料利用だと2時間先までしか見れないので実質使えない。月額308円でサービスを使えば10時間先までの局地モデルの予測結果を見れる。とはいえ10時間なので限定された使い方しかできない。寝る前に行き先の朝の天候をみたり、あるいは、朝起きてから局地モデルで10時間先をみるといった使い方になるだろう。局地モデルの雲量予測の誤差は小さいだろうから、尾根歩きでピンポイント、ジャストオンタイムで稜線の眺望を臨むなら使うのもあり。

 

数値予測モデルの概要、SCW局地は緑、GPV/SCW詳細は黄色、GPV/SCW広域は青(気象庁のサイトより)

 

 

 

いくつかある典型的なお天気パターン

GPVをずっと使い続けて、実際の天気と見比べたりしながらはや5年。GPVに現れる雲量の模様とか、典型的な事例がよくあるようだ。おお、これこれ。そんなのがあった時に下に追加していきます。こういうのを踏まえてGPVを活用すると精度が上がる。

 

 

その1 雷注意の模様

どんなパターンか

薄紫(<1mm以下の降るか降らないか)および濃い青(しっかりとした雨)が、のぺっとではなく、丸いシミが飛び散るようなまだら模様。初夏~秋にかけてよくみられる。緑黄赤の丸が点在するようなときは特に要注意。局所的に大雨、雷雨。

どんな天気になるか

大気が不安定の時にこうなります。雷雨となりやすい状態です。

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この模様が出るときは、大気が不安定で、かつ、”天気の予測”も誤差が大きい時です。時間経過とともに予測が動きやすく掴みにくい。平地の気象予報もGPVの雲量予測も、ともに、1日後(明日の予測)を見てもあまり当てになりません。ハイキングで晴れた場所に行きないならば、朝にもう一度雲量を見てみよう。~6時間ぐらいならおおよそ当たります。ただし天気(予測も)は不安定なので注意。数時間後ですら見るたびに雨の位置が動いてる。そんなときはもう諦めよう。どこに一時的な雷雨がやってくるか分からないようなかなり不安定な日。気象予測が動きやすい。それそのものが今後の気象の状況をよく表しているといってもいいでしょう。稜線上や沢にはなるべく行かないほうがよいでしょう。

事例1

下の模様でいうと、鳥海山あたりはこの時刻は晴れる可能性が高そうですが、福島の安達太良・吾妻あたりは雷要注意。同時刻の雷発生確率が2つ目の図。高くなっています(国際気象海洋(株)のサービス)。GPVの紫青のまだら分布は雷。と注意しよう。このような模様が出るときは上に書いたように大気が不安定で、予測結果も随時変わりやすいときです。ピンポイントに雨雲がないからといって安心はできない。下の例でいうと鳥海山あたりもやめたほうがよさそうです。

 

 

 

 

事例2

前日土曜の朝9時時点に、翌日曜の15時ぐらいの様子をみたものがこちら。こちらも斑点が局地的にあり大気不安定。上とほぼ同じである。発雷確率もあがっている。このケースだと宮城は比較的安定、南に行くほど怪しい。明日なんとかなるか? しかし微妙。発雷確率が特にあがっている中部の雨の様子が3枚め。

 

 

 

 

その2 安定した雨

どんなパターンか

のぺっと紫が100km幅近くで広域に広がる。濃い青も中心にあってもなくてもいいが、丸くまだらに分布せず、こちらものぺっと広がる。

どんな天気になるか

安定した雨という表現も変だけれど、大気が安定した状態で降る雨。冬季以外で年中現れる。紫は降るか降らないか程度の<1mmのしとしと雨。紫が広がっている程度なら、木々に雨滴も取られてそんなに落ちてこない。しっとりとした森歩きを楽しめる。青は合羽着てても傘さしてもバツバツバツバツといった程度に落ちてくる。

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大抵風も弱い。風速も一応確認してみよう。矢印の方向が風の向き。色と長さが風速。紫の短い矢印なら風は弱く大丈夫。矢印があっちゃこっちゃ向いてる場所ならさらに安定している。青が広がっているなら呑気に雨の森を楽しむって程度ではなくなる。青がかかってるなら、沢、稜線はなるべく行かないほうがいい。

 

事例1

右が風速。これでいうと福島山形新潟県境の飯豊山地あたりが、弱風の紫の矢印があっちゃこっちゃ向いてる。この時間でいうと飯豊あたりは多少雨はあるものの安定して穏やか。宮城山形県境あたりは青い部分もかかりそこそこの降雨帯に入っているし風も強くはないが一定方向を向いており、のどかなしとしと雨って感じではない。自分基準では森にも入らない。沢はもちろん入らない。

 

 

事例2

青い部分がほとんどなく紫が広範に広がる。こういうときも安定している。降っても霧雨か傘をさしても音がいない程度の雨。気圧も低いわけでもないし、ほとんど気圧の差がなく広範囲に広がる。7月のこんな日は森歩きは涼しくて割と楽しい。ザックを下ろしてなにか取り出すときも雨はじゃまにならない。木々の葉っぱが雨滴をほとんど取ってしまう程度で快適。尾根歩きでも大丈夫だろう。【実際の宮城の平地天気:無風霧雨】

 

 

その3 梅雨の時期、東北でよく見られる雲模様

どんなパターンか

梅雨の時期、東北地方でよく見られるパターン。東で雨、奥羽山脈を挟んで西で晴れ。

 

どんな天気になるか

いわゆるヤマセと概ね似たメカニズムで天候が現れる。東寄りの風が吹き、湿気と冷気により東側で雨、山脈を超えて西側に行けば雨を落として大気が降りていき気温を上げていく。その先の西側で暑く晴れるパターンである。西高東低の冬型と逆のパターンともいってよいが、冬型とは違い、低気圧が発達していくものではないので、風は強くないし嵐にもならない。

 

さらに詳しく

ヤマセといえる形でなくとも似たような天候パターンは7月にはよく現れる。特徴としては東風、東側に雨&寒い、山脈の西側で晴れ&暑い、となるときである。また、ヤマセと呼ばれる天気では、北東にオホーツク海があり、かつ冷たい海流が三陸沖に流れてきていると、大気に湿気が移り、かつ冷えているから太平洋側に雨をもたらす。山脈を超えれば、水分を落とし、山を降りていく過程でフェーンとなり山脈の西側は暑くなる。

宮城、山形でいうと、奥羽山脈超えた西側で晴れて暑くなる。湿気が特に多い場合は、月山鳥海の西側あたりまでは雨雲が残るときがある。ハイキングにいくなら鳥海山の西側がおすすめである。GPVで雨雲がどこまででいるかみて判断をするとよい。7月あたりはこのパターンが非常に多く、48号線で関山峠を境に天気がガラリと変わる。山形側では大晴れ、宮城側ではしとしと肌寒い雨となる。鳥海山や月山あたりだと東側は曇る場合が多く、滝雲がみられやすい。ハイキングするなら西側を歩くとよい。風はもちろん東風となるが、ときには強い風になるので風速もみておくと良い。稜線で水色の風だと結構な風が吹くつもりで。水色は十分歩ける程度だし、暑い日であるから強風が気持ちいい。黄色やオレンジがでることはこのパターンの気候では極稀にしかないが、出ていたらやめておこう。

 

事例1

夕方ごろの時間帯であるがその特徴が出ている。ヤマセとは呼ばれない形だが気候のでかたは似た感じになる。この事例では、宮城で雨雲、奥羽山脈を超えたあたりでは途切れるが、その西、月山あたりでは再び雨雲が発生している。晴れて暑くなるのは、日本海側の庄内あたりである。こんなときは酒田市や鶴岡市は晴れて暑くなる。晴れを求めるなら日本海側まで行くと良い。ハイキングしたいなら鳥海山が晴れやすい。風は水色。稜線ではそこそこの風が吹く。福島は東西で晴れと雨が別れている。東風で東半面で水分が落ち、西反面は晴れている。飯豊山地を超えた西側の新潟は晴れてフェーンで暑い。

 

 

 

 

その4 ”予報”が、安定している、安定しない。

一般の天気予報でこれはまず出てこないけれど割と大事な情報。気象庁の週間天気予報でいうと信頼度A,B,Cと記載があるがこれが似たようなやつ。詳細でも広域でもいいのだけれど、お目当ての日の予報が、更新されるたびにどんどん変わっていくような時。このようなときは、”予報”が不安定となる。逆に、全然変わらないときは、”予報”が安定しているとなる。

なにそれ?って感じだが、各種の物理数値シミュレーションにおいてもきちんとした意味を持つ。ちょっとした差異によって結果(予報)が大きく変わるような時、それは、計算対象の”系”が不安定なときに起こりやすい。予測計算結果の誤差が大きい傾向となる。天気予測計算(大気シミュレーション)でいえば、台風や低気圧が近づいている、前線が近い、気圧の谷が通過する、温度差の異なる大気が上下に乗っかりいわゆる大気不安定な時。これらのケースで起こる。前線がちょっと北にずれた、台風の進路が西にずれた。このちょっとの差で明日の天気(結果)も数時間後の天気(結果)が大きく変わる。そういうとき。

こういうときは、GPVや平地天気予報を見ても外れやすいと思っておいたほうがいい。予測が始終動いているような時、GPVの雲量を見て、雲が無い!明日大丈夫!、みたいな判断は外れることがままある。こういうときは天気自体も良いとは言えないことが多いのでそのぐらいの認識でいるとよい。逆に、いつみても変わらない予報が出ているときは、(系が)安定している時で、予報の信頼度も高い。広域に大晴れの時や シトシト雨の時は大気が安定していて予報も精度が高い。

気象庁の週間敵予報の信頼度もほぼ同じような感じだろう。予測結果に見積もられる数値誤差の”程度”でABCを付けていると思われる。その”程度”を数値として見ることはできないが、GPVで見るたびに予報が動くか動かないか、それがすなわちそれとなる。隠れているけど大事な情報。

 

その5