畑をめぐる冒険 – プロローグ –

11月10日。
すっかり秋も深まった。
深山は既に落葉し、
里山の紅葉もそろそろ終盤だ。
晩秋が迫るこの日、
僕らは大和町七ツ森へ向けて車を走らせる。
久々の里山。
急登に汗を絞られ、登っていく。
すると、
季節外れの春の姫が僕らを迎えてくれた。

イワウチワ
やがて山頂に辿り着く。
七つ森は侮れない。
ここを七つ登る体力と技量があれば
大概の山は登れると言う人も多い。

蜂倉山山頂
さて、今日は一座も登れば十分だ。
先週の疲れもまだ残るしな。
ところで、村上春樹は好きな作家の一人だ。
学生の頃には幾度となく読み返した。
特に好きなのは「羊をめぐる冒険」。
「僕」と「キキ」がやんごとなき事件に巻き込まれ、
数百年を生きる羊を探しに北海道の果てまで旅する物語だ。
擦り減るほど読んだ小説。
好きなシーンはソラで思い浮かべられるほどだ。
特に思い出に残る1シーンはここだ。
―― 七薬師掛けもせずに蜂倉山だけで降りてしまう今日、余った時間はどうすればいいの?
―― それは君の体力の問題だよ。七つ森のせいじゃない。
―― 畑を探したいな。
―― 畑?
―― だって、見つけてほしいと言わんばかりに、ブナを守る会の世話人の○○さん、秘密といいながら、何年も何年も、繰り返しキノコ畑の記事を出すんだもの。
―― そりゃそうだ。よし、畑を探しにいこう。
紅葉進む七ツ森。正面は笹倉山。