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野湯の夜は、ふ、けて・・・

 

 
ここは宮城県北、荒湯地獄。全国でも屈指の温泉の名所である鳴子、鬼首。そこからさらに山奥に向かった静かなところにある。高温の湯が湧き出る地獄。沸騰水が冷めることでシリカの析出が起こるのであろう。コロイド状になって湯中に彷徨い白濁する。時間をかけて作られたであろう自然の造形美をも到るところに魅せてくれる。
 

 

 

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地名は地獄だが、湯は天国だ。

 

 

 

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我々は夕方に地獄に着いた。

 

 

一通り周囲を散策したあとに、今宵の宿の用意を整え、さっそく湯船に浸かる。

 

 

大自然の中で全裸になるこの開放感は何とも表現に困る。

 

 

ウィー、アー、フリーーーーーダムっ!

 

 

とでも叫んでおけば良かろうか。

 

 

 

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目を少し上に向ければ、眼前には輝かんばかりに煌めく秋の森。

 

目を下に向けると、

 

 

 

――― やまちゃん、お湯に秋の森が映って金色に輝いているよ。

 

 

――― ですね。

 

 

 

いつもは白濁しているらしいのだが、お湯を取り替えたばかりなのか今日は透明だった。

 

 

 

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湯船に浸かっていると芳しい珈琲の香りが漂ってくる。

 

ヤマちゃんの自家焙煎豆。

 

お湯に浸りながら淹れてくれるドリップ珈琲。

 

 

うまい。

 

 

珈琲をすすりながら野湯。

 

なんという贅沢か。

 

 

 

――― やまちゃん、珈琲に秋が映っているよ、黄葉ブレンド だね。

 

――― ですね。

 

 

 

シェラカップで飲む珈琲はなんとも様になる。

 

 

 

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暑い夏が終わり秋が来たと思ったらもう晩秋だ。

日は短い。

 

 

 

長く浸かっていると日没してしまうので、

一回目の湯はすぐに終わりだ。

 

 

 

日没迫る野湯の傍の道路。この近くには鬼首地熱発電所がある。

 

 

 

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我々は今宵の宿に戻る。

 

 

飯をこしらえ、酒を酌み交わした。

 

 

 


 

 

 

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日が落ち、飯を食い終われば肌寒い。

 

もう秋だものな。

 

長い冬がもうすぐやってくる。

 

 

 

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我々は、ヘッドライトを装着した。

 

 

野湯に向かう。

 

 

 

 

 

 

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――― ヤマちゃん、満点の星空だよ。

 

――― ですね。

 

 

 

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――― ヤマちゃん、カシオペア座があそこにあるよ、とするとあれが北極星だね。

 

――― ですね。

 

 

 

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(5時間後、真夜中、3回目の入浴)

 

 

――― ヤマちゃん、カシオペア座が夕方からあんなに動いてる。月明かりのおかげで、照らさなくとも森が見えるね。

 

――― ですね。

 

 

 

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――― ヤマちゃん、流れ星が見えたよ。

 

――― ですね。俺もさっき見ました。

 

 

 

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――― ヤマちゃん、手がしわしわになってきたよ。俺の指、谷が走ってるよ。北丸松保沢だわ。

 

――― ですね。俺のはもう横川です。

 

 

 

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むさくるしいおっさん二人が織りなすロマンチックな夜。

 

 

 

野湯の夜は、ふやけていった。

 

 

 

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この物語は多分ノンフィクションです。

 

 

2 件のコメントがあります。

  1. おかしいですね、これは、草食系男子二人のロマンチックな夜。

    それを、持ち得てもいない文学的な感性を無理やり捻り出して綴ったものなのですが、肉食に映りましたでしょうか。
    肉食ならぬ男色話でもございません(笑)

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