朝活。

「朝活とは、朝早く起きて、出勤前などの時間帯に趣味やスポーツ、勉強など自己研鑽やストレス解消になるさまざまな活動に取り組むことです。」

 

ググるとこういう説明がある。素晴らしいことだ。といっても わたしはやっていない。出勤前にそんなことしてられっかよ。5分でも長く寝たい。そんな忙しい(せわしい)朝、相棒は雨降りでなければ権現森[Google MAP]で ”朝活” をしている。

 

 

相棒とは住まいも近いので、運転しているとよくすれ違う。数年前までは、目立つ黄色いフィアット フィットに乗っていたので よく 向こうから見つけられた。でかい声で私の名前を呼びながら手を振ってくる。朝っぱらから そんなことしてる輩がいるとは思わずに運転しているし、窓を閉めているから 手を振られて呼ばれてもこちらは気づかないことが多い。こちらに気づかれずに無視されると、周囲の手前 ちょっと気恥ずかしい思いをするようだ。そりゃそうだ。ざまあみろ。最近は白い車に乗っているので、向こうからは気づきにくく、私から見つけることが多い。しかし朝っぱらから こちらは気だるく運転しているというのに、相棒は半袖半ズボンで朝活。権現森へ出勤だ。そういう意味では朝活ではないのだが。彼にとってはただの日々の運動であろう。

 

権現森には山道も何本かあり 気軽に歩くことができる里山だ。春と秋はお散歩やハイキングをされる方も多い。しかし相棒ほどに権現森をくまなく歩き回った人は なかなか いないのではないだろうか。夏だろうが冬だろうが 日々のルーティンの朝活。加えて、動きやすい春と秋は、山菜やキノコも採れるためか、権現森一帯の沢筋という沢筋、尾根筋という尾根筋をすべてと言っていいほど歩いている。なかなかこんなやついないだろう。いや、むしろもう変態だ。

 

 

 

そんな相棒に案内されて権現森を歩いたこともある。さすがによく知る庭。なんでも知っているので 権現森のガイドをやらせたら彼に勝る人はなかなかいないだろう。「ほらあれ、あれ使って片手懸垂のトレーニングをよくここでしてる」「ほらあそこ、よくあそこで しっし してるからこれ以上いかないほうがいい」 せっかくおホームのお山なのに、全然山のことが出てこない。彼の朝活に纏わる よく分からないポイントの説明がしきりに語られる。やっぱり変態だ。

 

 

そんなこんなで 朝8時前後になると 朝活をする相棒から ときおりLINEで写真が送らてくる。数年前には、権現森の どこだかから、彼曰く、船形山だという写真を送って寄越した。泉ヶ岳がよく見える仙台市街や泉区など、南側からだと、船形山は後白髪山や蛇ヶ岳の背後にあって見えることはない。しかし彼は船形山だと主張する。

 

「俺、子供の頃から ここに住んでるんだぞ。仙台市になる前の昔のここの住所は宮城郡宮城町芋沢だったんだぞ、だからあれは船形山だ。」 旧宮城町といえば西部で山間(やまあい)の地区だったから船形山が見える(はず)といいたいのだろう。とにかくまったく根拠にもならないと思われる理屈のようなものを並べて船形山だと主張する。たとえ宮城郡、宮城町でかつてベッドタウンになる前にはここらも山間だったとはいえ、ここは宮城の西部ではないのだし、ここの地名がどうであれ見えるものは変わらない。山々が残っていた昔だって見えないし、住所が変わったところでそれは変わらない。そもそも山間となる西部に行ったって船形山は見えない。どっちが正しいかとラーメン一杯が賭かった。

 

 

 

 

カシミールによる鳥瞰図(地理院地図を基に立体図を導き、指定した地点からの眺望を表示したもの)を見せ、地図で説明したりする。反論(といっても宮城町だから!的な根拠にもならない主張なのだが)を述べていた彼も次第に声がしぼんでいき、後日ラーメンを食べに行くことになった。それからしばらくして また似たような争いがあり。その時もまた一緒にラーメンを食べに行った。それ以来、山の同定については彼はわたしに歯向かうことはなくなった。

 

ところで 山を歩いていると、遠くの山々、目の前の木々、足元の花々に目を向ける事が多い。気になる山、樹木、花には なんと名前がついているか知りたいからね。山、樹木、花の識別をすることを同定という。普段の生活ではほぼ使わない言葉だが山歩きの最中にはよく登場する。あそこに見える山の同定できる? 花の同定って難しいよね。とかとか。そんな会話が始まるといつも相棒は何故かもじもじしながら口を挟む。「山で どうてーって言うの聞くとなんか俺は違和感あるな!」「俺のこと どうてーって言われてるみたいでなんかやんだな!」やっぱり変態だ。

 

 

 

 

先日も相棒からラインでメッセージと写真が届いた。「過飽和ってすごいな!過飽和って知ってるかい?」とともに雲海っぽく雲に巻かれた山の写真が送られてきた。雲といえば空気中の水蒸気が過飽和になって生じた水分だ。わたしの天気の記事の中でみつけた”過飽和”。彼はこういったサイエンスの用語に興味を持つ。気にいるとしょっちゅう使ってくる。無駄に会話に織り交ぜてくる。こんなところは見ていて微笑ましい。

 

 

とある朝に送られてきた写真。雲に巻かれ浮き上がっている山。撮影箇所は彼の朝活の範囲で、権現森かその周辺。スマホ撮影。どこを向いて撮ってるかわからないし、ズームしてるかも分からない。情報はこれだけ。さて、山座同定してみよう。

 

 

送られてきた雲に巻かれた山の写真をもう一度見る。朝活の最中で見える山だろうから、二口方面か、蔵王方面か、泉ヶ岳方面か、となるだろうが、見せられれば 気になるので同定をしてみる。二口方面の写真だとすると雲がでているし細かい山がたくさんあるから同定は難しい。そもそも名前のない そのあたりの名無しの山かもしれないし。「○○○山?」と私が返すと返事があった。「中央は○〇〇」という。な訳はないだろうと反論する。

 

そこにライングループにいるCさんが乱入してきた。「いつも見てるんだろうから間違うわけがない。わたしは信じる!」的な応援をしている。こやつら いつも同じだ。ぼんやりとした雰囲気のようなもので判断を下し根拠とする。同定においてそんな感覚的なものを根拠としない私は、仔細にこの写真を見つめ直す。「尾根が2つに割れて 右に流れてる様に見える、その間に雲が入り込んでいるからだ。山が重なっているのかもしれないが分からない。左肩には小さなもっこりがある。このもっこりは○〇〇山に似ている。だからこの山は○○○。」その後さらにいろいろ追加説明もした。流れで、久しぶりにラーメンが懸かった。相棒はというと、前に撮った(晴れの日の)写真探してくる! そして、やっぱり○○○だったけど、俺は別にラーメンいらないよ、ふふん、遂にしてやったりっていう ドヤ顔の未来を描いていたようだ。

 

 

 

 

数時間後、相棒はかつて晴れた日に

同じ場所から自分で撮った写真を見つけた。

 

 

相棒は三度(みたび)降参した。

 

 

煮玉子2つな!

 

3杯目、ごち。

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

 

 

 

 

山座同定の答えは下の方にスクロールするとあります。興味のある地域の山好きな方は答えを見ずにどーてーしてみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、低地でおきやすい過飽和の為せる偶然とはいえ、後ろにある黒森が隠れ、左にあったはずの泉ヶ岳も隠し、蘭山だけ独立して見えたことで相棒に泉ヶ岳と思わせた気象のマジック。変わった条件だったようだ。

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