オニヤンマ。

8月も最後の週末を迎えた。夏ももう終わりに近づく。ここしばらく疎(おろそ)かにしていたロープワークを少しやっておこうということになって相棒と山に入った。こういったことをやるも早いものでもう4シーズン目だ。

 

 

ロープワーク。最初は 教えてもらっても、理解が進まず、とにかく手探りだった。何だか結びやら 何だかノットやら 何だかヒッチやらをとにかく覚えた。ロープを使って安全を確保をするやり方もいろいろやったり試したりした。ネットで調べたり、本を読んだり、人に聞いたり、自分でやったりしながら、正しい方法はどうなのか どれなのか。何度も試した。家の中でロープやら何やら引っ張り出してあれこれやったものだ。これはみんな通る道なんだろうな。この辺てきとーだと怖いし、分からなければ身の安全、仲間の安全が保証されない訳だし。

 

 

森に入ると靄がかかる中に日差しも入る。暑くはあったが心が透き通る。森はええなぁ。

 

 

岩登りも沢登りもアイスクライミングもクライミングウォールも、ロープを使った安全確保の取り方の原則はどれも大して変わらない。トップが登って自己確保、そして後続が確保できるようにしてロープを垂らす。後続はそのロープで自身を確保しながら登る。シンプルにはそれだけだ。その原則を押さえた上で、自分がやる沢やら滝やら高巻きに合わせてやり方を調整すればいい。岩登りや本格的な沢登りやらは 自分の山遊びとは違うので、ロープワークもガチガチの正しいやり方でやるというのも 自分の遊びの中では正しくない。自分の山遊びに合わせたロープの使い方をアレンジすればいい。そういう判断みたいのができるようになれたのも3シーズンこなしたからだろうか。今ではここではこうすればいいというのを自信を持って決断できる。こういうことって年月がやっぱり必要なんだろう。

 

 

そんな話を相棒としながら森に入る。相棒の方は もともと なんつーか自由人で、小難しいロープワークとか そういうのは得意な分野でもないのだが、それでも体でいろいろ覚えたのだろう、たまに間違いもあったりするが、それでも自分なりのやり方で、時には応用を利かせたやり方でロープを扱っている。一見すると間違ってそうに見えるやり方でも、案外、その場面に合わせた合理的な方法だったりする。それぞれ成長したのだろう。

 

ロープワーク練習の高巻き現場へ向かう途中、遂に見つけた鳶舞茸。木の根元にある本体は流れかけだったが地中の根っこから出てきたものは極上だった。

 

 

今日の練習項目は高巻きや滝を登ったあとのトップのセルフ(自己確保)の取り方。そして 後続へのロープの出し方だった。片手でメインロープでインクノットでセルフを取る。ただそれだけのことなのだが、そこには合理性があり、より安全に事を済ませることができる。少し教えてからやってもらったあと、右壁(立ち木)でも左壁(立ち木)でも試してもらった。相棒も納得していたようだ。マリオのような顔で笑顔でいつものように頷く。しかし今日は信用できそうな顔をしていた。納得できるものだから体にも入りやすかったのだろう。

 

 

 

今日の私の秘密兵器。オニヤンマ君。

 

 

ところで今日、わたしは秘密兵器を持参していた。中国から直輸入の舶来品のオニヤンマ君だ。円安の世の中でも送料込みで410円!森に入る前に これを帽子につけた私を相棒は冷ややかな目で眺めていた。とはいえ、わたしも効果はないと思っていた。これ効かないよ!ってのをSNSでみたこともあったからだ。ところが先日、某先生と話していると、これはアブには忌避効果があってそれなりに効果があるらしいと聞く。そんなわけで調達して持ってきたのだ。アブに刺されると痛い。そりゃー囲まれたときにまったく刺されないって訳にはいかないだろうが、少しでも刺される回数が減るならめっけものだしな。相棒は馬鹿にしているかのような顔をしているが気にしない。我々は本番の高巻きをするために滝の右岸に取り付くため 藪に入っていった。

 

 

 

 

ここらから始めるかと斜面を見上げていた。その時 私の手のひらにバチンッ!と激痛が走る。痛(いたっ)!と叫ぶ。こいつはチクッ!とするだけのアブじゃない。季節遅れな気はするが悪名高いメジロアブではなかろうか。アブに刺されたと分かると 相棒は後ろで にへらと笑っていた。オニヤンマつけてるのに!と。しかしすぐ相棒がどよめいた。そこら中にアブいるぞ! やばい。メジロアブに囲まれたらひどいことになる。その瞬間また右手の 今度は甲に軍手の上から張り付いたアブにバチンッ!とやられる。程なく相棒も、いって!いってー! と騒ぎ出した。高巻きやらロープワークやらやってる場合じゃない。わたしは即座に退却を開始した。わたしを小馬鹿にするように笑っていた相棒も大騒ぎしながら私のあとを追う。イッテ! チクショ!イッテー!大騒ぎしながら。

 

 

 

 

その後の逃亡戦。

わたしには3度目の バチンッ!

が来ることはなかった。

 

相棒は後ろで体中やられているようで、

大騒ぎしている。

 

イッテ! チクショ!イッテー!

 

 

 

オニヤンマ君のおかげでわたしの被害は2箇所。相棒は15箇所。歴然の大勝利であった。

 

 

 

 

 

 

オニヤンマ君。

効果あり。

 

 

次の記事

朝活。