ドローン。

“蘭山”と書いて “あららぎやま”  泉ヶ岳山頂から東にちょうど3kmのところにある イカした名の山だ [地理院地図]。山名もイカしていれば、山容もイカす。主尾根が数本、直角に交わるように繋がり その山体を成している。然るに、見る場所を変えれば、様々な姿に変えて現れ 目を楽しませくれる山だ。

 

 

 

 

骨格となる尾根の特徴的な交わり方ゆえか、上から見れば、神社の鳥居のようにも見える。とすれば、山が かたち作る 巨大な鳥居という訳だ。山深い船形連峰と外界の境界として、はたまた、船形連峰への門なる蘭山。なんて想像を膨らませてこの山を見るのも味わいがあっていい。

 

 

山容もイカす蘭山。主尾根が幾何学的でイカしている。

 

 

 

昔は藪山だったようだが、いまでは蘭山南西部にある小森山の麓あたりに明瞭な登り口もあって、随分と人も入っているようだ。踏み跡で固められ藪もうるさくない。最近ではもう登山道といっていいぐらいになっている。春に秋に冬に何度もこの山を訪れている。

 

蘭山を訪れるたびに楽しみにしていることが1つある。木々の薄いところで振り返れば、ちょっと見たことがない感じの泉ヶ岳が見えるのだ。そして、県南あたりからだとどこからでも見えるシンボル的なあの真四角でどでかい泉ヶ岳スキー場ゲレンデ。それがちょうど隠れる。スキー場が見えなくなると その出で立ちは途端に深山の色が濃くなる。その姿がなんともイカしていて好きなのだ。

 

といっても藪山は藪山。どこから見ようと木々に囲まれていて 広々とした眺望は得られない。そこから見る泉ヶ岳が好きだと言っても その姿を満足に見ることはできないのだ。そこでその年の晩秋、蘭山からの泉ヶ岳をしっかり見てやろうと、ドローンを2機用意して向かったのであった。

 

 

 

 

新緑に、紅葉にと、麓はちらほら歩くこともあったけれど、山頂を訪れるのは数年ぶりだった。林道そばにある細尾根の取り付きには赤テープやトラロープまで設置され、整備が進んでいた。多くの人が入るようになったのかもしれない。小森山まで上がり、そのまま蘭山山頂である南峰まで上がった。久々の山頂ではびっくらこくほどの山名札祭りに仰天してしまった。一休みしてから、そのまま進路を北に向けて北峰を目指す。ここから先はそんなに人も入らないようではあるが、北峰までの尾根は藪と呼べるほどのものではなく、気分はルンルンの尾根歩きだった。

 

 

快適な北尾根。北峰まで続く。冬季には雪庇が出来る尾根だ。

 

 

 

蘭山北峰につくと、ドローンに適していそうな木を探した。ドローンといえば自動操縦できる小型プロペラ機のことだと思われがちだが、車両、航空機、船など、自動操縦、遠隔操縦できる機体は、広義にはドローンと呼ばれる。今回用意したドローンも飛行型ではない。レッグとアームを備え ほとんど市場に出てこないニッチな木登り型ドローンである。うまく登れるかは分からないので2機もってきたのだ。

 

 

 

風も弱く、晩秋の穏やかな晴れ間だった。道中、ナメコもそこそこみつかった。久しぶりに来た蘭山だったが 冬季に行く予定だった山行の下見も兼ねていた。小森山から南峰にあがり、雪庇伝いに北峰に、そしてそこから南西の尾根を使って周回したかったのだ。下見するほどのルートでもないのだが、今日はそのルートで周回して歩く予定だった。とはいえ北峰につくと満足してしまい、冬は行かなくてもいいか、なんて思ってしまったが。

 

 

数年前から雪がたっぷりついたときに歩こうと思ったまま、いまだいってない。なかなかタイミングが限られるのだ。

 

 

 

さて、ドローンは泉ヶ岳をうまいこと撮影することはできるのだろうか。選んだ木はそこそこ太く、うまくいきそうである。期待に胸を膨らませながら、まず1機目のドローンを起動し、トライする。

 

 

 

 

1機目の機体は 日本のメーカーによって開発されたミッコー号。レッグとアームは細身で短い フィメールタイプだ。不安な面持ちでクライムアップのレバーを倒した。スルスルと登っていく。これはうまく行きそうだ。しかし眺望の得られるところまでもう少しというところで動きが止まってしまった。仕方がないので、クライムダウンのレバーを倒す。ところがミッコー号の動作がおかしい。ガタガタ機体を震わせたかと思えば、動作を停止し、木にしがみつくような格好のまま動作を停止してしまった。

 

 

 

 

なんとも言えない格好で動作を停止したミッコー号。

 

 

ならば2機目だ。この機体は特別で、日本のメーカーによって開発されながらも、中国とロシアでオーバーホールを受けたアキヒム号だ。極寒のロシアでオーバーホールされ過ぎて、頭はスキンにされてしまったが、口元の髭は健在、頑健で黒々としている。レッグとアームは屈強で、4m、5mぐらいの高さならスイスイ登るという触れ込みである。

 

 

再びクライムアップのレバーを倒した。すると、ウッキー、ウッキー、という奇妙なな機体音を発しながらあっという間に登りつめていく。十分な高さまで登るとウキキッと言いながらまるで子供のようにはしゃいでいるではないか。なんだかこの声どっかでも聞いたな。

 

 

中国、ロシアでオーバーホールされたと言われるアキヒム号。抜群のクライム性能である。

 

 

その高性能っぷりに驚嘆しながら撮影ボタンを押した。もちろん被写体は、この距離感からはなかなか拝むことができない泉ヶ岳東面である。なんなく降りてきたアキヒム号が撮影した写真を期待に胸を膨らましながら確認した。

 

 

 

 

蘭山北峰からみる泉ヶ岳(左)と北泉ヶ岳(右奥)

 

 

う、美しい! これがあの泉ヶ岳か! スプリンバレースキー場は見えるものの、泉ヶ岳のあの真四角でどでかいスキー場ゲレンデは見えないため深山感が半端ない! わたしも肉眼でその姿を見てみたいものだが、今後もリスクを伴う場所はドローンに任せておいたほうがよいだろう。登れないのではない。断じて無い。降りれなくなるのが怖いのだ。いや怖くない。リスクなのだ。君子危うきに近寄らず、と偉い人も言っているではないか。うんそうだそうしよう。

 

 

 

 

ところで、なんとも言えない格好で木にぶら下がっていたミッコー号を目にした私は、なんだかどこかでそれを見たような気がして仕方がなかった。しかし思い出せない。そればかり考えて、北峰から南西の尾根、岩が連なる斜面を下っていたら、ズルっとして岩に小突かれ、ザックのウエストバックルの部分を壊してしまった。しかし思い出せない。あれはなんだったか……。

 

 

 

 

 

家に着くなり思い出した。

 

 

あれだった。

 

 

 

子供の頃よく遊んだモンキーツリー

 

 

 

 

 

前の記事

角平の記憶(2022.1)