ブナの森のキノコ採り。

天然のキノコの美味しさは格別だ。キノコの味、コクのある出汁、そして、香り立つキノコの芳しい匂い。それそのものの美味しさもあるけれど、採ってきて食べるということが加わるからさらに美味しく感じるのだろう。人間も地球に住まう動物である。生きるために何より重要なのは食料と水だ。庭に畑でも作って野菜を育てるなどしていれば別だけれども、街で暮らしていれば、食料や水はお金との交換で済んでしまう現代。食料や水を、自らの手で得るといった機会は、必要性も含めて極めて乏しくなっているとも言える。キノコ採りに限らず、山菜採り、そして、釣りなどは、食う物を見つけて、採ってくるという狩猟生活の一端を踏めるから楽しいのだと思う。街に住む私のような者にとっては、それをしなきゃ飢えるというわけではない。したがって、キノコ採りや山菜採り、山歩き、森歩きは生活の中で生きるために必須なものではないので、どこまでいってもレジャーとしての楽しみとなりますけどね。

 

話は変わってキノコ採り入門。山歩きを趣味とする人でも、キノコは気になるが毒キノコ怖い!そんな人も多いはず。そこで、ブナの森で見つかる簡単なキノコをご紹介。といってもキノコ歴は私自身全然なので偉そうなことは言えませんが、 初心者目線で、採りやすいキノコを選んでみます。去年は本や図鑑やネットで調べたり、桜井先生に教えてもらったり、わからない時は宮床の山海里のご主人にみてもらったりして覚えていきました。キノコ鑑定は、色や形などに目が行きがちですが、手触り、匂い、一噛みして味を覚える、生え方、場所、時期などを踏まえた総合判断が重要です。そしてまた大事なのが、似ている毒キノコを一緒に覚えるということ。図鑑鑑定だけではやはりダメで、熟練の人に教えてもらって経験を積むことがとても大事です。ところで、キノコの同定は、花の名前を覚えることと似ているところがあります。この次は、ここでこれが咲く、と覚えていくと、花の名前も覚えやすいし、山の季節感を感じるという楽しみ方の幅も増す。キノコも同じような感じです。草木の花の美しさの代わりに、味覚と発見の喜びが上乗せされる。秋のキノコは、草木の花が終わったころに秋に咲き出す山の花でもある。菌界の花であるキノコも愛で、ありがたく食すると、山歩きや森歩きの楽しさが倍増します。

 

ブナの森で見つけやすく、判別もしやすい美味しいキノコを秋の出始めの順に3つ。

 

 

覚えておくとブナの森でよく見つかるキノコ その1

 

ナラタケ・ナラタケモドキ

サワモダシともよばれコクのある美味しい出汁が取れる。ブナの森を通る登山道でもしょっちゅう見られる。山形、宮城あたりの山間ではキノコシーズンが本格化しだす9月下旬あたりからよく見つかる。格別に美味しいというキノコではないが簡単にたくさん採れて見分け方も容易。

1.傘表面の中央部に鱗片(黒いゴマのようなつぶつぶ模様)があること。

2.傘の縁に条線(放射線状の線)があること。

3.柄(ツカ)を折ると感触のよいポリっとかパキっとかボリっとした音や感触が伝わる。別名ボリボリ。

この3つが揃えば間違いない。幼菌、老菌では1の鱗片や、2の条線が見られないものがあるが、不安ならそれを省いて取ればよい。出て来る場所としてはブナの倒木が多く、密集して株のようにで出てくることが多い。傘の下にツバ(スカートのようなもの)があればナラタケ、無ければナラタケモドキ。

 

乾いた状態で見つかることも多く、乾いたものはそのまま保存できる。ゴミや虫を神経質になって洗いすぎると味が落ちるので、軽く水で流す程度にして茹でずにそのまま凍らせたほうがよい。茹でてから凍らす場合は、出汁が出てしまうので浮いてきたゴミだけ捨てて煮汁も冷凍保管。水分を多く含んだ成菌の場合は、風が強い所においておけば乾燥保存も可能だが、干し柿と同じように失敗すると腐ってしまう場合もあるので数日で食べてしまったほうがよい。柄の部分は消化が悪いので大きい古い柄は折って取り除く。柄のポリポリ感を好んで食べる人もいるのであまり神経質に柄を取ることはない。調理は、キノコ自体の味は薄いので、ネギとソーセージなど、具材をあまり入れずにナラタケ多目にして、白だしや、鍋の素、しょうゆ等で薄く味付けると香りと味が際立つ。焼いても美味しい(記事)。

 

 

覚えておくとブナの森でよく見つかるキノコ その2

ムキタケ

ボリュームと肉の質感、味、出汁ともによく、とても美味しい。巨大なものが見つかることもしばしば。見つけやすく、収穫量を期待出来るキノコ。採れる時期は葉が落ち始める晩秋。ツキヨタケが終わる頃に出てくる。宮城、山形の山間だと10月下旬から11月上旬が最盛期。こちらもブナの倒木から出やすい。ツキヨが終わる頃といってもツキヨタケと間違わないことが最重要のキノコなので判別はツキヨタケとの違いをみることにある。

1.皮を剥くと剥けること。剥くと桃の果肉のような美味しそうな白い肉が出てくる。ツキヨタケとの違いを見る重要なポイント。

2.キノコを切り取った柄の部分に黒い染みが無い。ツキヨタケと異なる重要なポイント。

この2点。あとは色や形、出て来る時期や場所を覚える。覚えてしまえばたくさん採れ、収穫が見込める。その他、ツキヨタケはとても虫にたかられやすく、若いツキヨでない限りは周りに虫がうじゃうじゃいる。ムキタケはツキヨほど虫が着かない。ツキヨはよく見るので、慣れてくると、色や雰囲気だけでもツキヨだと分かるようになります。

 

ムキタケ

 

調理は、水分が多いので天ぷらには向かないが、それ以外は何でも。水気は多いが、バター醤油でじっくり焼いて食べることはできる。ムキタケソテー。その他、どう使おうが美味しい。保存は塩水につけて虫出し、数日なら冷蔵して使用。それ以上は冷凍して保管。乾燥保存は向かない。下処理の際も、柄の部分を見て黒い染み(ツキヨタケでないか再確認)がないか見るとよい。

 

 

覚えておくとブナの森でよく見つかるキノコ その3

ナメコ

宮城山形では10月中旬から11月末まで長い期間見つかる。雪が降り出す12月でもしばしば見つかる。とっても美味しいご存知ナメコ。標高が1000m以上であれば気温によっては9月末から出始める。ムキタケの次に紹介しているが、ほぼ一緒の時期に出る。山の紅葉が谷や裾に向かって走り出す時期、山麓のブナの黄葉も燃えるように広がる。ちょうどその頃からナメコの季節が始まる。ブナが育つ山で秋を味わうのであれば、黄葉とともにナメコ採りにも精を出せばよりいっそうブナの秋を楽しめる。山のナメコは、栽培物とは異なる大ぶりのものがたくさん採れる。味も絶品で、山で採れたナメコを食べてしまうと栽培物はもう別物となってしまう程だ。栽培物と見かけや色はそっくりで、キノコ採りをしない人でもナメコと分かるぐらいに外観は分かりやすい。ただし注意すべきは、猛毒キノコであるコレラタケ。雨のあとなどヌメリが出たコレラタケはナメコと似てくる。ただし、生える場所は、ナメコのように倒木ではなく、土やゴミからなどが多い。朽木から出る場合も、ナメコがもう出ないようなかなり古くなった朽木から出る。腐った老菌のような外見をしている。森の宝石と呼ばれるナメコとは見た目の気品さがまったく違うので、見間違うことは無いが、存在は知っておいたほうがいい。登山道でもしばしば見られるが、人が多く通る登山道の場合は幼菌で採られてしまうことが多いので大きくなるまで残ることは無い。倒木丸々一本ナメコで埋め尽くされるほどのナメコを見つけたときの嬉しさったら無い。

 

ナメコ

 

 

 

 

キノコ採りあれこれ

カゴ(竹カゴ、腰カゴ、背負カゴ)を使う

登山ついでの登山道脇のキノコ採りならビニール袋でいいと思いますが、キノコ採り目的で山に入るなら、カゴはあったほうがいい。キノコは、花のように受粉して種子を落とすことはしませんが、キノコが子実体としてキノコになるのは胞子を飛ばすため。カゴは両手が使えて取りやすいだけではなく、カゴに隙間があるので歩いていると胞子が落ちやすい。歩きつつ胞子を山に返すことができる。地域によってはカゴを持たずキノコを採っていると白い目で見られるそうです。南欧の国だとカゴを持たず、袋に入れてキノコを採ってると罰金になるんだとか。ナラタケなんかがたまに白くなっているのを見ますが、これは胞子を飛ばし始めたナラタケです。胞子は、風に乗って飛んでいく、動物に踏まれて運ばれる、カゴにいれていれば人によっても運ばれる。

 

キノコを散らす

採ったあと、帰路で周辺にキノコを散らす。倒木など見つけたら適当に投げるだけでいいので採ったキノコを少し散らしておく。採ったその場でもいいので、いくつかを遠くに投げる。腐朽菌であれば倒木めがけて投げる。そうするとやがて菌が広がりまた出てくることでしょう。飛騨のキノコ仙人の方がキノコの取り方で解説しておられました。

 

食べすぎない

基本的にキノコは消化はよくありませんし、カロリーも高くありません。たくさん食べても太ることはないでしょうけど、食べ過ぎると腹を下します。とは言われていますが私は大量に食べてますが、腹を下したことはありません(笑)

 

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