エシコ沢左俣、大滝の記憶。(2020.6)

 

 

宮城県、二口(ふたくち)にあるエシコ沢。一度聞いたら忘れない。なんだか女の子のようなかわいい名前の沢だ。エシコ沢右俣にいけば初心者レベルで慣らしには良い沢らしいけれど、左俣に行くと、45m前後の大滝があるらしい。ブログ等ぐぐって写真を見たが、沢初心者の我らが4人パーティには背伸びに過ぎる滝に見えた。

然るに、一週間前からトップの男と二人で作戦会議に没頭した。仕事そっちのけで没頭した。ここでピッチを切れるのではないか。この灌木は支点になる。しかしそこまでの草付き斜面が危ないのではないか。落口手前のテラスっぽくみえるところでもピッチを切れるのではないか。ハーケンはちゃんと打てるのか。黒光りしてる苔は滑らないのだろうか。危ないのでインクノットのロープウェイで後続は登ろう。時間はかかるが仕方がない。作戦会議はエンドレスに続いた。当日、現地二俣にて、夢にまで見た大滝が遠目に姿を現した。刹那、背筋に戦慄のようなものが走った。全然女の子のような沢じゃないやん。ギラギラした見上げるほどの漢っぷりの滝やん。なにがエシコだよ。嘘つきー! いや、誰がやねん。 戦慄でもなく、武者奮いでもなく、怯えが走っただけだった。

さあ帰ろう。はい、終了のお知らせ。

しかし傍まで寄ってみた。石を触ってみる。滑るのだろうか。スタンスやホールドはあるのだろうか。ピッチは切れるのだろうか。上まで眺める。トップは既に行きたそうにしている。できれば行かしてあげたいがきちんと判断せねばならない。やはり、事前情報と現場は違う。作戦はもろくも崩壊したけれど、何とかプロテクションを取りながらいけそうだ。わたしも腹を決めた、というより、行けそうだと冷静にそう思えた。「行きましょう、これは大丈夫。」 即座に残りの女子二人から猛烈な反対意見が飛んできた。「えー!」「慎重派のあなたなら絶対行かないだろうから安心してたのに!」「無理だよー!」等々。トップと二人でなだめたりすかしたり無碍にしたり。そしてトップから提案があった。最初の1ピッチはトップで行ってくれ。最後は俺がいくと。何それかっこいい。それ何て青春ドラマ? わたしも言ってみたいぞ。さすがトップ、言うことが違うぜ。けど、わたし最初に登るの? おしっこちびった。

10分後、我々は大滝に取り付いた。

 

 

見上げるほどの漢っぷりな大滝。