畑をめぐる冒険 – プロローグ –

 

 

 

 

11月10日。

 

 

すっかり秋も深まった。

 

 

深山は既に落葉し、

 

 

里山の紅葉もそろそろ終盤だ。

 

 

 

―――――――

 

 

 

晩秋が迫るこの日、

 

 

僕らは大和町七ツ森へ向けて車を走らせる。

 

 

 

 

 

 

久々の里山。

 

 

急登に汗を絞られ、登っていく。

 

 

すると、

 

 

季節外れの春の姫が僕らを迎えてくれた。

 

 

 

イワウチワ

 

 

 

―――――――

 

 

 

やがて山頂に辿り着く。

 

 

七つ森は侮れない。

 

 

ここを七つ登る体力と技量があれば

 

 

大概の山は登れると言う人も多い。

 

 

 

蜂倉山山頂

 

 

 

―――――――

 

 

 

さて、今日は一座も登れば十分だ。

 

 

先週の疲れもまだ残るしな。

 

 

 

―――――――

 

 

 

ところで、村上春樹は好きな作家の一人だ。

 

 

学生の頃には幾度となく読み返した。

 

 

特に好きなのは「羊をめぐる冒険」

 

 

「僕」「キキ」がやんごとなき事件に巻き込まれ、

 

 

数百年を生きる羊を探しに北海道の果てまで旅する物語だ。

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

擦り減るほど読んだ小説。

 

 

好きなシーンはソラで思い浮かべられるほどだ。

 

 

特に思い出に残る1シーンはここだ。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「それでその余った時間はどこに行ったの?」

僕もグラタンを途中であきらめ、コーヒーを二杯注文した。「余った時間?」

「だって飛行機のおかげで十時間以上も時間が節約できたんでしょ? それだけの時間はいったいどこに行ったの?」

「時間はどこにも行かない。加算されるだけだよ。我々はその十時間を東京なり札幌なりで好きに使うことができるんだ。十時間あれば映画を四本観て、二回食事できる。そうだろ?」

「映画も観たくないし、食事もしたくなければ?」

「それは君の問題だよ。時間のせいじゃない」

・・・略・・・

「映画が観たいな」 と彼女は言った。

「映画?」

「だってせっかく飛行機で時間を節約したんだもの」

「そりゃそうだ」 と僕は言った。そして我々は最初に目についた映画館に入った。

 (羊をめぐる冒険、 第7章、 村上春樹)

 

 

 

―――――――

 

 

 

―― 七薬師掛けもせずに蜂倉山だけで降りてしまう今日、余った時間はどうすればいいの?
 

 
―― それは君の体力の問題だよ。七つ森のせいじゃない。
 

 
―― 畑を探したいな。
 

 
―― 畑?
 

 
―― だって、見つけてほしいと言わんばかりに、ブナを守る会の世話人の○○さん、秘密といいながら、何年も何年も、繰り返しキノコ畑の記事を出すんだもの。
 

 
―― そりゃそうだ。よし、畑を探しにいこう。

 

 

 

紅葉進む七ツ森。正面は笹倉山。

 

 

コメントを残す