4

山小屋の夜は更けていく。

 

茨城から来たというMさんも飛び入りで入ってもらい、

 

夜中まで3人だけの宴は続いた。

 


 

 

 

久しぶりの船形山頂の小屋泊だった。日曜と月曜は、新庄神室一泊の望みを捨てきれず、台風の影響による風速予報とにらめっこし続けた。あのヤセ尾根の稜線、日曜の嵐で登るにはいくらなんでも危ない。前泊して月曜にロング山行してこようか。いろいろ悩みに悩んだが、結局、ヤマちゃんとの船形小屋泊を選んだ。
 

 

 
朝にゆっくり起きてから準備をして、待ち合わせて、大和町のスーパーで一緒に食材を買う。さらにお昼を外で食べてからでも間に合う。色麻大滝からの船形山。この余裕がなんとも素晴らしい。小荒沢林道さまさまだ。日曜はいずれにせよ荒れ模様なので、行き慣れている登山道なのも安心だった。

 

 

 

―――――――

 

 

 


山頂では、分水嶺を一歩でも超えると、立っていられない程の猛烈な風が体にぶつかる。山頂標識がこんな傾いてしまうのも頷ける。

 

 

 

―――――――

 

 

 

15時頃に山頂についたものの、小屋には誰もいなかった。旗坂にも色麻大滝にも、多くの車がとまっていたので、何人かはいるかもと思っていた。でもまぁ当然か。こんな日だものな。取り敢えず美味いコーヒーを淹れてもらって落ち着く。程なく、ビールで乾杯。こんなときにしか買うことも無いエビスビールだ。15時から飲むビールは美味い。
 

 

 
16時を過ぎ、さすがにもう誰もこないだろうと確認し、宴の準備を始める。大食漢のヤマちゃんがいるからして、肉は盛大に持ってきている。彼は各地の小屋にしょっちゅう泊まっている。特に焼石岳の登山道や小屋管理をされている方々との親交が深く、豪快な大宴会はよく話にきいている。
 

 

 
肉を焼き始めると程なく。薄暗くなり始めた頃、突然ドアを開ける音。えらいごっつい若者がやってきた。暴風雨のこの時間に来るとは!茨城から遥々やってきたという。東北の静かな山が好きで、遠征は東北の山が多いんだとか。この天候の中、泉ヶ岳表コースから長倉尾根を辿り、初めての船形山に来るのだというから大したものだ。テントも持ってきたらしい。

 

 

 


著名な山の小屋では到底できないダラシのない使い方。

 

 

 

―――――――

 

 

 
なんだか、自分の船形山初登頂の時を思い出してしまった。確か山を始めて、5ヶ月とちょっとだった。何としても雪が残る船形山を見たかった。山知識ゼロ、体力もゼロスタートからだったが、何やかんやと自分なりにがんばった。テントを担いで、大好きな後白髪山から船形山を目指したあの日だ。そういえばあの日も、稜線で何度も膝をつくほどの暴風だったなぁ・・・。

 

 

 

思えば無茶をしたもんだ。暴風になるのは分かっていたのだが、どうしても見たかった山頂からの夕日と朝日。その頃から使い始めていたGPVで天気を見て、雪が残る船形山に行くならこの日に行くしか無い!と、決行したんである。今では残雪期の怖さというのは、自分なりにではあるが分かっているところも多い。残雪期は私のような素人にとっては本当に怖い季節だ。

 

 

 

―――――――

 

 

 

 


5月初旬、後白髪山から辿り、初登頂したときの船形山。山形方面は光のカーテンが降りていた。
 

 

 

―――――――

 

 

 

ちょいちょいと挨拶を交わすと、ノリが良さそうな感じ。

 

 

すぐに我々の輪に入ってくれて盛大な宴会が始まった。こんな日に山に泊まろうとするやつなんざ山キチガイに決まっている。話はどんどん盛り上がる。ヤマちゃんも彼も、これまでいろんなとこを歩いてきたようだ。朝日連峰の底なしに酒好きな名物小屋番の方々との思い出やら、いろんな山々についての情報交換。
 

 

 

中でも驚いたのが、朝日連峰24時間で全山踏破を試みている方のお話。もう何年も失敗しているのだそうだが、その日は、全小屋が団結して、協力するんだそうだ。衣類やら水やら行動食やら。24時間で全山というが、正確には全コースなんだそうだ。例えば竜門に繋がる日暮沢とかは、一回降りてまた登り返すんだそうだ。そういうのを24時間で。
 

 

 

いやはや・・・山の世界というのは・・・。

 

 

 

ヤマちゃんも、茨城から来た彼も。重い荷物を背負って20km、30km歩くことも、何度もやったことがあるという。私など経験や技術はおろか体力ですら二人には到底敵わないんだなあ。

 

 

 

 


まぁ、当然のごとく、かぶってもらったけどね。つか、まさに熊じゃん!?

 

 

 

―――――――

 

 

 

話は尽きず、夜更けまで続いた。

 

定義に降りようか、再び泉ヶ岳に戻ろうかと決めかねるMさん。そこで明日の予定を3人であれこれ相談しあう。大丈夫だろうということで、少し遅くなるが、必ず雲は取れるから!と、山頂からの景色を見てもらってから出発してもらうことになる。程なく3人は寝袋に入った。

 

 

 

―――――――

 

 

 

翌朝。

 

 

 

なぜか私は、マットも敷いていない床の上で寝ていた。

 

 

 

寒くて5時に眼が覚めた。

 

 

 

どんだけ寝相悪いんだ!?

 

 

 

パジャマか!?パジャマが悪いのか!?

 

 

 

いやナイトキャップか!

 

 

 

―――――――

 

 

 

 


日の出の時刻。強風とガスはさめやらず。

 

 

 

―――――――

 

 

 

朝食を作り、時間を過ごしつつ待つ。

 

 

 

そして遂にガスが飛んだ。

 

 

 

眼下には、まばゆい紅葉で色づく山々が見えだした。

 

 

 

―――――――

 

 

 


山頂という特異な場所に小屋が有る船形山。こんな贅沢な小屋って実はなかなかないんである。扉をあけて10歩もあるけば山頂夕日と山頂朝日が拝める山なんである。
 

 

 

―――――――

 

 

 

黒伏山も見えだした。昨晩、話題に出た七ツ森も見てもらえた。泉ヶ岳も北泉ヶ岳も長倉尾根も三峰山も蛇ヶ岳も。歩いてきた稜線を見てもらうことができた。そして本日向かうことになる後白髪山も。無事茨城に帰られているとよいが。
 

 

 

―――――――

 

 

 

実に楽しい宵となった。

 

 

 

しかし、関東圏でもある茨城に住む彼の話を聞くに、私はあらためて思った。

 

 

 

こんなにいい山々が近くにある東北。

 

 

 

ここに住む幸せって存外に贅沢なことなんだ。

 

 

 

そして良い出会いを頂ける。

 

 

 

今日もありがとう船形山。

 

 

 

 

 

 

4 件のコメントがあります。

  1. くまぷーさん,ヤマさん、山頂避難小屋ではお世話になりました!

    日曜日大荒れの予報で長倉尾根から稜線では獣と鉢合わせただけでしたので、山頂避難小屋にまさか誰もいないだろうと予想していたのですが小屋五十メートル手前辺りで肉の香ばしい香りを感じ、荒天による幻覚かもだなんて感じました。笑

    小屋に入ると山男が二人でバーベキューしている光景を目の当たりにしました。その時の衝撃といったら成獣熊と出会ったぐらいのインパクトの大きさです。

    そして、お二人からのおもてなしに感激..避難小屋宴会好き冥利に尽きました!最高でした!

    是非是非また船形山,東北の山でお会いしたいです!

    ありがとうございましたm(_ _)m

  2. おはようございます。

    翌朝の山頂小屋に長居させてしまったので、無事つけただろうかなぁと思っていましたので良かった!
    いやぁ、こちらも、この天候で、この時間に、もう誰も来ないだろうと踏んでの宴開始でしたので、
    まさかの登場に仰天。しかし、きさくに輪に入ってもらえて助かりましたー。

    楽し美味かったですねぇ!また機会がありましたらやりましょう!

  3. ば〇らしいけど 面白かったぞー(感想) 
    こういうの大好きい 小説よりいい!
    また「シリーズ物」でやっておくれ♪ 

  4. 感想ありがとうございます。

    そんなに山泊をしてきたわけでもありませんが、小屋泊のよさで私が感じているのは、
    “出会い”でしょうかね。普段、山でスライドする人、あるいは、山頂で会う人とは、
    多少の会話をすることはあっても、繋がりまではなかなか生まれにくい。

    ともに一泊するというのはやはり大きなことなんでしょうかね。
    今は友人として、度々山で遊んでいる今回の同行の友も小屋泊での出会いが切っ掛けでした。

    ところで、一年の、とある期間は山頂小屋の主みたいによく小屋に行かれているその友ですが、
    さすがに、変な被り物を被って、大展望を越に入って見ている私には、なかなか話しかけることが難しく、
    しばらく危ない人じゃないかどうか、観察していたそうです(笑)

コメントを残す