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旅する携帯電話

アイスランド、ブルーラグーンという温泉。

腰程度の深さで、足を着けるとさらさらと絹ような真っ白な砂(熱水沈殿物)。湯の温度も適度で、広大な景色を眺めながら温泉を楽しめる。

(写真は残っていなかったので、画像はiStockより)


 

 

物にも心は宿る。いい子いい子してあげながら大事に使うと、道具や物はしっかりと働いてくれる。道具や物は大事にして、しっかりお手入れしながら使いなさいよという、お師さまからの教えだったのだと思う。最近、道具をぞんざいに扱っていたので身を正さなければ。そう、物にも心は宿るのだ。我々だって、行ったことがないところに行ってみたかったり、旅行が好きなように、物だって時には旅をしたいのだ。

 

特に私が持つ携帯電話は、歴代、旅行好きだ。私と一緒に旅行すればいいものを、たまに一人旅でもしたいのだろう。しばしば、一人ででかけて行ってしまう。

 

困ったものだ。

 

 

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8664km、一人、空の旅

あれは15年ぐらい前だっただろうか。当時の仕事で、地熱に関わる試験と視察をしにアイスランドに行った時のことだ。初めて降り立つ地球でも極北の地。雪と氷で凍てついているのかと思いきや、中央部は荒涼として砂漠のようだ。対するに、沿岸部は漁業と観光が盛ん。日本人が抱くような、魔女の宅急便のワンシーンのような、南欧の素敵な街並みが広がっていた。このアイスランド。わずか30万人ちょっとの国ながら、自国の言葉を有する。もちろん政治、マスメディア、出版、運輸、芸能、はたまた、アイドルグループなども。30万人の国ながら、社会インフラに必要なものが全てあるわけだ。日本で育った感覚からは想像もできない。

 

 


ブルーラグーン。白いぬったりとした砂で泥パックもできる。地熱発電で利用した地下深部のミネラルをたっぷり含んだ蒸気。それを冷ました還元水(でも温度は高い)と海水を利用している世界最大の露天温泉。写真はこちらより。

 

 

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政令指定都市の仙台市の人口と比べても1/3程度しかいないのですよ。それなのに社会インフラ、文化、政治、政治家、経済、タクシーの運ちゃん。すべてがアイスランド語とともに30万人の人達により、社会が動かされ、国が成り立っている。街角のポスターにはアイスランド語で書かれ、アイスランド語を歌うアーティストが宣伝されている。書店にはアイスランド語のハリーポッターシリーズが横積みされている。わずか数万の読者のために出版されるベストセラー本。軽くカルチャーショックを受けてしまう。

何気なく首都レイキャビックのホテルの近くからオーロラも見えたりなんかして、びっくりなアイスランド。そういえば、ホテルからオーロラが見える地まで不案内なので、ちょうどエレベーターに居合わせたすごく素敵なお姉さんに、にっこりと道案内をお願いしたのだが、気さくに応じてくれた。アイスランド素晴らしい。

 

私が当時持っていた携帯、ガラケー君もアイスランドがとっても気に入ったのだろう。私はもう帰路につかねばならなかったのに、延泊するといって聞かない。仕方がないので置いてきた。

 

早く戻ってくるんだよ。

 

 

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それから幾日か。

 

アイスランドのホテルから、会社にクレームの電話が来た。

 

 

--- ”お客様の置いていかれた携帯電話が早朝にものすごいアラーム音で、鳴りだすと2時間ぐらい止まりません!ロックがかかっていて操作もできません!お送り先をお教えください!

 

 

おやおやガラケー君・・・いくら浮かれているとはいえ、公共の場所ではマナーをしっかりしなければだめぢゃないか。程なく空を飛んで帰ってきた。おそらく機内でもギャーギャー鳴りながら・・・。

 

ガラケー君が帰国すると、会社の購買部から苦情が来た。

 

 

--- ”うっさいから、早く取りにこい!!!”

 

 

 

 

 

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最新スマホはトイレもする

あれは去年の秋だっただろうか。船形山山麓でキノコをたくさん採って、宮床のセブンイレブンまで戻り、トイレに立ち寄る。漏れそうだったのだ。便座でホッと一息。ちょっと分からないキノコがあったので山海里のおじさんに見てもらおう。今日は鍋だな!とほくほく顔で出ようとすると、スマホー君、僕もトイレ!というではないか。仕方が無い、ちょっと待っててやるから、俺はすぐそこの山海里に行ってくるよ。スマホー君を残して山海里に。採った環境を写真で見せて鑑定してもらおうとスマホー君を取り出そうとする。

 

 

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あ、トイレだった。

 

 

焦って、急いで迎えに戻る。

 

店内に駆け込み、トイレのドアをバーンと開けると。

 

そこには、30代ぐらいのお父さんと、下半身まるだしでシーシーしている4歳ぐらいの男の子。

 

なぜか片手には私のスマホを握っている。

 

 

 

2人はぎょっとして私を見る。ギョッとしたのは私も一緒だ。

 

--- ”あ、スマホー君ですね、は、はい・・・これ”

 

 

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高速を疾走するスマホー君

今日はMさん憧れのツツジの山でルンルンハイク。朝に矢本PAでみなさんと待ち合わせ。お初にお目にかかることになる方も来るそうだ。素敵な方だよとお聞きしていた。第一印象は大事だ。早めに着いたPAでトイレを済まし、間違っても、ソーシャルウィンドウはオープンしていてはならない。しっかりキュッと閉めて確認する。窓を開けて風を感じるのが好きな私は、しばしば、ウィンドウをオープンしたまま、颯爽と山の中を歩いてしまうことがあるのだ。いつだかも、黒鼻山から三叉路、その帰路を颯爽と歩いていたら、Eさんに、冷ややかな目でビシッと指さされた。

 

ーーー ”・・・開いてる”

 

粗相があってはならない。

 

第一印象はとっても大事なのだ。

 

キュッとね。指差し確認!

 

窓よーし!

 

 

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程なく、みなさんがやってきてご挨拶。にこやかに初対面をすませ、二台連なって南三陸に向けて、高速をさあ出発だ。

 

 

--- “楽しみだね、田束山” 

 

 

なんて言いながらS氏の後にピッタリついて車を走らせる。ICを1つぐらい通過した頃、手元にスマホー君がいないことにハッと気づく。

 

 

--- ちょっと電話してみて! とMさんに言う。

 

 

車内にあれば鳴るから!

 

 

しかし、車内では鳴らない。

 

 

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そして誰か男の人が出た。

 

 

--- ”もしもし”

 

 

なぜか焦って電話をブチっと切るMさん。

 

 

なぜ(笑)

 

 

しかし判明した。

 

まだトイレにいたのだ!!!やばいどうしよう! とりあえず急いでS氏に連絡を入れる。急に車間が離れて見えなくなっただろうから心配しているだろう。

 

Mさんと、車内で、ドジっ子事案の応酬が始まる。

 

 

--- ”ほらね、私のほうがしっかりものなんだからね!かっこいいこと書いてるけど、いつもやらかしてばっかりじゃん!

 

 

--- ”何を言う! あの時もあの時もあの時も! (毎週のように転んで、すねに傷を増やしていって、もはや、闘犬土佐犬の戦いのように、勲章を作るためかのごとく、山に行ってるみたいじゃないか!)”

 

 

しかし、今この段階においてはさすがに私も分が悪い。

 

押されまくりである。

 

そりゃそうだ(笑)

 

 

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もう一度、Mさんが私のスマホー君に呼び出し電話。

 

 

また知らない男の人が出て何か言っている。

 

--- “あ、ちょっと待ってください、切らないで! ちょっと話を聞いて下さい!”

 

 

何か立場が逆である(笑)

 

どうもスマホー君を確保して、どうしたものか案じていたらしい。

 

 

 

私が電話を代わり、

 

--- ”これこれここのIC出口手前の広いところでとりあえず路肩に駐めているところなのですが、どちらにおりますでしょうか・・・。

 

--- ”降りる予定だったところの一個先ですけど、そこならすぐですから、持っていきますよ!

 

なんていい方なんだろう・・・。

 

 

 

 

 

 


走ってスマホー君を持ってきてくれたお兄さん。お礼にとりあえず荷物にあったお菓子を渡そうとしたが辞退。本当にありがとうございました。

 

 

 

 

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IC出たところの道の駅で再び待ち合わせて再度合流。

 

 

 

S氏が我々を指さしながら、ズバッと一言

 

 

 

 

 

 

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