幻の霧

 

鈴沼の湖上、消えゆく紫の霧。ヤマちゃん撮影。


 

稀に沼などに現れる紫の霧。鈴沼と氾濫原での発生を聞く。稀にと言っても年に数回あるのか無いのかさえも分からない。僅かな時間だけ現れ、程なく消えてゆくという。おぼろげで儚い霧。幽霧といったところか。そこに居合わせることが出来れば僥倖だろう。そこは桃源郷への入り口か、はたまた魔界へのいざないか。

 

桜井先生も氾濫原で幻の霧に出会っている。目の高さぐらいに紫色の薄い霧の膜が現れ、氾濫原を覆い尽くしたそうだ。慌ててカメラを構えたものの、もう既に紫の発色が弱くなってしまっていたとか。それでも、写真には現実のものとは思えない強い紫を残していた。ヤマちゃんが見た時も、鈴沼の湖上を包み込むかのように紫の霧が現れ、名物の倒木の浮島も何もかも、湖上に見えていたものすべてが紫の霧の下に隠れたらしい。カメラを構えた時には既に遅く、おぼろげに消えゆく霧を写した一枚だったとか。別の名では瑠璃沼と呼ばれる鈴沼。その湖上を淡い紫色に染める幻の霧。自然のいたずらが見せてくれる刹那の煌めき。

 

ところで、飛行機の機内の窓から見える空の色が紫に見えることがある。この現象、光の波長やらレイリー散乱やら、興の無いことを持ち出せば説明はつくが、シラケてしまうので横に置いておこう。稀にしか出会えないという事実は変わらないが、ある意味では湖上に地球の大気と宇宙との境い目となる場所と似たような環境が現れたと考えることも出来る。宇宙(魔界)への扉が、湖上に突如として現れたのだと思えば何とも神秘的ではないか。

 

船形山域の名所とも言える鈴沼と氾濫原。この地で幻の霧の発生を聞くというのは何だか不思議なものだ。地形的に発生しやすい場所であるのかもしれないし、足繁く通う方が多いからなのかもしれない。理由は良くわからないが、分からないままにしておいたほうが楽しい。

 

氾濫原のニリンソウ、今年はGW終盤あたりになりそうですね。