信太をめぐる冒険。

 

信夫山見晴台より。

信太(のぶた)。人の名前ではない。山名である。本日行くことになった山だ。先日、”13日の土曜日に福島の信太山に登ってから写真展を見に行きませんか?” と、S氏からお誘いがあったのだ。ご一緒させて頂くことになるのは年が明けて最初となるので是非行きたいところだ。天気も悪くなさそうだ。大寒波も去り寒くはあるが小春日和のようなのどかな日になりそうだ。終わってから福島市の写真展を見に行くということなので、3時間程度で歩き終わる手軽な里山だろうと想像する。

さて、信太山だ。恐らく福島市の近辺ではないかと思われるが聞いたことは無い。福島市のど真ん中にある信夫山(しのぶやま)は訪れたことは無いが知ってはいた。信夫山のことではないかと思うものの、私が名前すら知らない山をあちこち行かれている氏のことであるので、そういった山もあるのだろうと思う。なにせ、氏の行くところと言えば宮城県内ですら私の知らない山が多いのだ。隣県となるとなおさらである。とりあえず探してみる。”OK、Google! ” なんて恥ずかしいことをスマホに聞くことはできない。照れ屋さんは、ブラウザを立ち上げてポチポチ入力だ。”のぶた”と入れてみると、うん、いくつかの変換候補の中に”信太”がある。信太を選び”信太山”を検索だ。お。あったあった。信太山駅から福島駅の乗換案内が出ている。なんかおかしいなと思いつつ、写真展に行くからきっと近くなんだろうと思い至り、検索結果を開いてみる。

 

 

 

信太山駅 → 福島(大阪)

 

 

 

大阪の福島じゃないか!信太山駅どこよ!と思って探してみると大阪、和泉市にあるではないか。なんと、東北を離れて大遠征か!東北の山遊び、ならぬ、近畿の山遊びが遂にハジマルー!?さすがはS氏だ、関東、中部なんか軽く飛び越えて一気に近畿である。

 

な訳はない。

 

もっかい探してみよう。信太山。信太山。見つからない。地理院地図で福島市周辺を探してみるもののやはり無い。同僚に聞いてみると、同じく探していたようだ。見間違えてるんじゃないの?メールみしてよと言われたので転送して見せる。やはり信太だ。納得したようだ。探すことしばらく。

 

”やっぱり信夫山のことなんじゃないの?聞いてみてよ。”  ”いやでもなあ、携帯で文字打ったとしても、信夫(しのぶ)山では変換で出てこないかもしれないから、信じる、夫(おっと)とか入れてから入力するとかあるじゃないですか。だから、太って字が出て来る状況が思いつかないんだよね。やっぱあってるんじゃないかと思うんだよ。” 

 

探すこといくばくか。やはり見当たらない。そこへやってきた晴天のへきれき、いや、閃き。ぼくちん、わかっちゃったぞ!信夫山の由緒ある正しい書き方が信太山なんだな!夫(ぶ)太(ぶ)。さもありなん。きっとそうだろう。・・・と、アイデアを披露してみる。

 

”でも、ブログで紹介されていた以前の記事は、やっぱり信夫山になっていたよ。そんな由来書いてなかったし。聞いてみてよ(2回め)。” 

 

うーん。こんなことをしている間に出席のメール返信もすっかり遅れてしまったし、ついでに聞いてみよう。信太山と記入して改めて聞いてみよう。よし、そうしよう。

 

信夫山見晴台より。吾妻小富士、一切経山と福島市街。

”こんばんは。参加でお願いします!ところで信太山はどこでしょうか。探しても見つかりません。”

すぐに返信がある。

”信太山は福島市の真ん中に島のように浮かぶ山ですよ。”

追撃だ!また信太である!もうこれは間違いなかろう。きっと夫(ぶ)太(ぶ)で由緒ある古来の山名なのだろう。

 

かくしてやってきた土曜日、ほがらかな良い日だ。モルゲンで赤く染まる南屏風岳を眺めながら福島市に向かう。福島市内のど真ん中にある小さな丘のような山だが広さはかなりのものである。神社もいくつも祀ってあるようで、古来より地域の信仰の山なのだろう。

こういうところは大抵、地名や歴史の由来が看板に書かれていたりするものなのだ。信太を探しながら歩いてみようと探索気分で歩きだす。

 

 

 

などと余計なことを考えていたら、レンズ交換中に手袋で持っていたレンズがつるり。アスファルトに落ちて、コロリンコロリン転がってしまった。やっちまったぜ・・・、中古でそれほど高くないレンズではあったけど、逝ってしまわれたか・・・。

涙目になりながら一応試し撮り。AFも作動し、ピントはあうようだ。あとは写りだが・・・、おお、撮れてる。マクロレンズらしいキリキリ感。町並みもばっちり撮れている。遠景の小鳥をトリミングしてもキリキリ写っている。新年早々、お年玉ならぬ、落とし玉(レンズ)にならなくてよかったよかった。

 

 

さて、あらためて、頭の中は信太である。史跡らしい看板や石碑を見ると信太を探す。何かを探しながら山を歩くのは楽しいものだ。

 

 

 

されど、無い。なかなか見つからない。

 

 

”直接聞けよ!” というツッコミはやめて頂きたい。いや現に突っ込まれたのだがここは反論しておきたい。

聞いてしまったら冒険は終わりなのだよ、と。

あれこれ考えをめぐらしながらの信太をめぐる冒険は終わってしまうのだ。

説明看板が見つかる度にくまなく信太を探すのだ。されど見つからない。

 

 

 

 

 

猫ちゃんの写真が飾られているところがあった。もうやけくそだ。

ネコの信太くんを探してしまう。

とにかく探すはだ。

全部の写真をくまなく見るもののいたのは太郎ちゃんだけ。ここも不発だ。

 

 

 

 

 

 

”見ざる、聞かざる、言わざる” 日光の猿も言うではないか。

聞かざる。

聞いたら冒険は終わってしまうのだ。

 

 

 

 

そしてゴールに近づく頃、ガイドセンターがあるではないか。皆で入る。

信夫山の歴史や本、写真などが展示されていて、職員のお姉さんが2人も常駐する立派な施設だ。そこに信夫山の歴史が書かれた本を発見!なんとこんな小さな山だが本がいくつもあるのだ。

由緒正しい山なのだろう。信太が遂に見つかるはずだ。無い・・・。最後の手段、職員のお姉さんに聞いてみた。このお姉さん何か切符が良さそうな人でシャキシャキしている。”信夫山は古来の名前では信太山が使われていたことありますか?”

 

 

一閃、なぜか無表情に一言。

 

 

”無いです”

 

 

ちーん。冒険は終わりに近づいてきてしまったようだ・・・。

 

 

 

 

 

半ば諦めかけた私は冒険を終える前にS氏の奥様に伺ってみた。実は、信太を探していたのだと。

Mさんいわく。

”実はねー、なんか言ってたよ。メールの返信がすぐにないし、どこに山があるか分からないって言ってるんだよね、変だよねって” 

もう仕方無い。事情を話す。実は、信太山を探していたんですよ、カクカクシカジカ。カクカクシカジカ。

 

”ただの打ち間違いだってー”

 

信太をめぐる冒険は終わった。

 

 

 

 

 

信太山はいいところ。